不器用で、武骨で、でも野球には人一倍ひたむきで
ちなみに、彼の故郷である北九州市若松区は、筑豊地区から遠賀(おんが)川を通って運ばれる石炭の集積地でもあった若松港を擁する街。吉井監督をして「もっとガラ悪いヤツかなと思ってたけど、真面目でちゃんとしてる。絶対相手をヤジらないし、なかなか真摯ですよ」とも評された彼の一本気でどこまでもアツい性格は、いまも色濃く残る故郷・若松の気風――気性は荒いが義理人情にはとことん厚い炭鉱夫たちの“川筋気質”そのものだ。
そんな彼だから、むろん“荒れる”ことで全国的に知られる地元の成人式では、ゴリゴリのリーゼントに羽織袴姿で“取材される側”。見た目がそうであれば、どうしたって周囲から誤解も受けやすいし、好き嫌いも自ずと分かれる。実際、中学時代はヤンチャすぎると見なされて、地元の高校には進学できなかった、というほどだから、それで損をしたことだって一度や二度ではないだろう。
ただ、新聞の求人欄を見てうっかり入ったイケイケの実話誌編集部がキャリアの“原点”だったりもするぼくからすれば、彼のヤンキーすぎる精神性は、むしろ推しポイント。初めてのクルマに、“顔”からしてイカつい『レクサス・RX』を選ぶというセンスも、そのうち金ジャラのネックレスにセカンドバックで契約更改に現れそうな“昭和パ・リーグ”っぽくて、とても好きだ。
さわやか笑顔で「休日はなにしてる?」みたいな質問に手書きで答えたりする『プロ野球ai』のグラビアには、どう考えたって不向きだし、どちらかと言えば、成田山詣をとらえた往年の“大松組”3ショット(福浦和也さん、サブローさん、大松尚逸さん)のような写真でこそ、映えるタイプ。
不器用で、武骨で、でも野球には人一倍ひたむきで。ともすれば、前時代的とも取れるゴキゲンな歌詞とメロディの登場曲『男の勲章』に、「大好きです。素敵じゃないですか。すべてが」などと言っちゃえる平成生まれの25歳が、悪いやつなわけがないのである。
ところで、オリックス時代は、ノドを潰すほど声を出しすぎて、「試合中に声が裏返ったら中嶋監督(代行/当時)がアメをくださります(笑)。1試合で、いっぱいアメをもらうこともありますし、声が裏返るまで、潰れるまで、出したいと思います」(前出・同)とも語っていた大下。
3年前の文春野球では、そんな彼の大声を心配したミュージシャンのDOMIさんから、高い抗菌作用をもつ「マヌカハニー」をリコメンドされていたし、その後はファンからの差し入れをきっかけに、彼自身もノドのケアにそのマヌカハニーを愛用していると聞く。
幸いなことに、日本を代表するお菓子メーカーである親会社ロッテは、ベンチで噛み放題のガムのほかに、むろんのど飴も作っている。看板商品の『はちみつカリンのど飴』には、マヌカハニーを1袋に1000mgも配合したその名も「たっぷりマヌカハニー」なる商品もすでにある。
大下が声を裏返えらせても、ロッテベンチにはいつ何時でものど飴がある。きっとプロモーションに長けるロッテのことだから、吉井監督がマヌカハニーのど飴で大下をねぎらう動画も、そう遠からず球団公式YouTubeにアップされることだろう。
大下が入り、石川慎吾を得て、ロッテベンチの雰囲気も目に見えて変わりつつある。
その“声”はもちろんのこと。オリックス時代の彼にしばしば食らったような、あるいは、今季阪神との交流戦、大学の先輩・大山悠輔の向こうを張って放った甲子園での一発のような、勝負どころでの目の覚める打撃にも「この胸に信じて」期待したい。
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