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選手とともに戦った…ベースボールカフェ「ロスター」店長が語る、激動のエスコン開業イヤー

文春野球コラム ペナントレース2023

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ようやく「ゴールが見えてきた」

――でも、06年日本一のシーズンで新庄さんは引退してしまいますね。確かお店で最初に伺った話では田中賢介のファンって言ってませんでしたか。06年は賢介がレギュラーをつかんだ年でもあります。

「そうなんです。新庄さんが引退して、賢介推しになったんです。誰を応援したらいいのかなと思ってたら、うちは母がファイターズにハマってるんですけど、『賢介はいい子よ。結婚するならああいう子がいいわよ』って言ってきて、ああ、そうなのかなって。賢介も(森本)稀哲も、あの頃の若手はまだみんなチャラく見えて。でも、出来がってる人じゃなく、成長を見守っていける初めての世代でした。それって地元チームだからできることなんだねって。で、母の言うことにしたがって、ピンクのグッズを揃えましたよ。今も家にいっぱいあります。ピンクはそれまで好きじゃなかったんだけど、賢介のおかげで好きになりました」

 つまり、ロスターの田中店長はがっつりファイターズファンなのだ。北海道とファイターズの歴史をまっすぐ歩いてきた。賢介が米球界に挑戦した時期は陽岱鋼推しになり、やがて賢介が復帰してダイカンと2人推しになり、えーと、2人ともチームを去った今は?

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「今は推しに迷ってる時期なんですよー。石井一成選手のユニフォームを買い、古川裕大捕手のユニフォームを買い、トークイベントで賢介が『水野君はいい選手!』って言ってたから水野達稀選手のユニフォームを買い、ピンクを引き継いでくれたから加藤豪将選手のユニフォームを買い、4人の選手のユニフォームを持ってる状態なんですよ」

 今は迷っているのだそうだ。迷っているのにとりあえずユニを買っていくところが、スタンスとして好ましいと思う。但し、田中店長は今年、それらのユニのどの一着にも袖を通していない。2023年エスコンフィールド開業&ロスター・エスコンフィールド店出店! 田中店長は何と「田中ダブル店長」になってしまった。

「エスコン出店を聞いたのは去年の秋だったと思います。『やるから』って言われて、自分がやると思わないから『へー』って受け流してたんです。『メニュー考えて』『はーい(棒)』。そうしたら開業が近づいてきて、まさか、ええっ、私がやるん、ですよね?ってなりまして。はい、両方やってます。試合日はシフトにもよりますが、大体、空港店やってからエスコン掛け持ち、試合のない日は空港だけ。忙しいです。この半年、ホントに働きました。もうあとちょっとでシーズン終了なんで、ゴールは見えてきたんですけど、途中は大丈夫かなと思ってました」

 ああ読者よ、「田中ダブル店長」も新球場開業のシーズンを戦い抜いた。実は球場には沢山のスタッフ、裏方さんが働いておられて、新庄監督や選手らと一緒にオープニングシーズンを戦ってきた。みんな大変だったんだ。そしてようやく「ゴールが見えてきた」ところだ。僕はこのひと言が言いたい。 ありがとう。いつもありがとう。

「私、こんなにエスコン行ってるんですけど、まだいっぺんも球場のイスに座ったことないんです。試合のことも知らなくて、空港店で顔見知りのお客さんに『こうだったんだよ』って教えてもらってます。いっぺんイスに座ってファイターズを見てみたいですね。エスコンフィールドのファイターズはどんな感じでしょう」

 追記 ミニミニ豆知識。ロスター新千歳空港店の名物、選手の顔がカフェ・ラテ表面に浮かび上がる「ラテ・アート」だが、田中ダブル店長によると現在、育成契約選手で対応可能なのは柿木蓮のみだという。なぜかというと柿木君しか写真がないから。なので、新千歳店のカウンターに自前の写真データを持ち込めば、「山口アタルが笑ってる」でも「阿部和広ナイスバッティング」でもラテ・アートにしてもらえるそうだ。もちろん育成以外も、写真データさえあれば「中島卓也いい感じ」「飯山コーチ絵になる男」などラテにし放題(なんと通常料金とのこと!)。

ロスター空港店の名物ラテ・アート、中島卓也です ©えのきどいちろう

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