「これから毎打席、毎試合ホームラン打ったら、万波も60号行くんだよ!」
ボーイソプラノと呼ぶのもまだ早い、幼い声が言ったのです。
7月12日のエスコンフィールド、対イーグルス14回戦。ファイターズはこの時5連敗中、結局13まで伸びた大型連敗の真っ只中という頃でした。この日もやっと同点に追いついた直後に勝ち越され、しかもそれが浅村栄斗のホームランなので余計に「あーあ」だったのです。この1本で、万波中正がとうとうパ・リーグのホームラン数トップの座から落ちてしまった……。
と、しょんぼりしていたら聞こえてきたのでした。これから毎打席、毎試合ホームラン打ったら、万波も60号行くんだよ!
子供のファンの応援は本当にまっすぐ
声から察するに小学生の男の子、まだ1年生くらいかもしれない。そんな幼い明るい声が、至って当たり前のことのようにそう言ってのけたのでした。
この時期の万波中正は、ヒットは打っているものの春に量産していたホームランの勢いはぱたりと止まっていた頃。大人のファンというのはこういう時、「また打ち出すさ」よりも「そうかここまでか」というネガティブな予想になりがちです。何といってもまだ弱冠23歳、未完成な若造だしなあ、と。
でも子供の目はそうじゃないんですね。自分よりずっとお兄さんでずっと大きくてずっと強くて、夢と希望と才能と可能性の塊がユニフォームを着てバットを持っているんです。毎試合ホームランの期待だって、決して絵空事とは思われない。
札幌ドームでもエスコンフィールドでも、子供のファンの応援は本当にまっすぐです。大人は試合展開が思わしくないとすぐがっかりして野次ったりしますし、負けていても元気だなと思ったらビールを飲み過ぎてる人だったりする訳ですが、子供達はお酒なんか飲まなくても(当たり前)真剣な期待を込めて「この1球」「この打席」に見入っています。きっと抑えてくれる、きっと打ってくれる。「どうせ」や「知ってた」はありません。だって、選手は、憧れのヒーローなんだから。
わかりやすいヒーロー選手、やっぱりチームの華ですよね。初めてエスコンフィールドに来た子供達が、「球場も選手も格好いい」「野球場で食べるホットドッグはおいしい」「きつねダンス楽しい」「ポリーとフレップ可愛い」等々の一般的感想から更に一歩進んで、「ファイターズ大好き、ファンになった」と思ってくれるかどうか。ここで大きく物を言うのがヒーロー、スターの存在だと思うのです。