9月20日の午後9時過ぎのこと。ナイター中継を眺めながら、悔しい気持ちはあるし、もちろんうれしくはないのだけれど、不思議な感情が胸に湧いているのが分かった。我らがマリーンズが、優勝マジックを残り2としていたオリックスに痛恨の逆転負け。目の前で3連覇のリーグ優勝を決められて、18年連続のV逸の瞬間を自宅のテレビの前で見届けたのだが、情けないことに万年Bクラスだった時に物心がついた中年ロッテファンにはメンタル的な“防衛本能”が働いてしまったんですね。

シーズン開幕前はBクラス予想が多かった

「よく考えてみれば、ロッテが優勝マジック対象チームじゃないか。ゲーム差こそ離されているけど、2位で優勝争いを繰り広げていたわけだから、大したもんじゃないか! 去年は5位に終わったけど、吉井理人新監督でいきなりAクラス入りなんて、いやいやよくやっている方ですよ」

 いや、負け惜しみに聞こえるのは百も承知ですが、FAなどの大型補強がなかったなか、メジャー帰りで復帰した澤村拓一投手や、昨年は巨人でプレーしたグレゴリー・ポランコ外野手やC.C.メルセデス投手などの加入は大きかったけれど、昨季のBクラスから一気に躍進したのは想像以上の健闘と言えるのではないでしょうか。むしろ現役ドラフトで加入した大下誠一郎内野手のムードメーカーぶりや、「できすぎ友杉」という古式ゆかしい感じのジョークとともにしっかり1軍に定着したドラフト2位ルーキーの友杉篤輝内野手の活躍は、まさしく期待以上だったと思いますね。

ADVERTISEMENT

 それこそシーズン開幕前のスポーツ各紙の評論家による順位予想を振り返ってみれば、それは一目瞭然というものです。スポーツ報知で中央競馬担当の記者を仕事にしている私なんぞも、勝負事の予想の難しさは痛いほどよく知っているつもりではありますが、プロ野球の場合はチームの「戦力分析」が多分に反映された結果が順位予想になっているのだと思います。競馬の予想では相手関係の戦力分析に加えて、馬の体調(仕上がり)などの要素も加味して◎や▲といった予想印を打っておりますが。

 いざ見てみるとスポーツ報知では10人の評論家のうち、最高順位は3位(3人)で、順位を足して人数で割った数字は「4.4」と高いものではありませんでした。ちなみに同業他紙のA紙とB紙の東京版を参考に調べたところ、どちらも評論家24人中、1位に挙げたのは球界きっての理論派で知られるお方が唯一くらいで、だいたいはBクラス予想が多かったのが正直なところ。同じように平均の数字を調べましたら、たまたま両方とも「4.3(小数点第2位四捨五入)」というものでした。

 えっ? 私の順位予想ですか? はい、正直に白状しますと「何とか3位に入ってくれればいいなあ」などと思っておりました。まあでもロッテファンの皆様も、そう変わらない気持ちだったのではないかと勝手に推測しますが、どうでしょう。以前のこのコラムで書いた腕利きの競馬関係者で、オリオンズ時代から一筋の“アニキ”も、「そりゃあ優勝してほしいよ。49年ぶりのプレーオフ抜きのリーグ優勝を。でも、とりあえずAクラスに入ってくれれば……」とポロッと言っていたくらいですからね。とにかく残りのシーズン、前向きに切り替えて応援していこうじゃありませんかということです。

個人的に印象深い2016年のドラフト指名選手

 そこで肝心になってくるのは誰を“推す”のかという話です。オリックスに優勝を決められたシーンをぼう然とみていて、私の頭に「あれ、そういえば……」と、ある選手の顔が浮かびました。そう、2016年ドラフト1位で入団してプロ7年目を迎えている佐々木千隼投手です。

佐々木千隼 ©時事通信社

 なぜ顔が浮かんだかと言うと、胴上げ投手となったオリックスの山崎颯一郎投手が7年目。優勝の輪で宮城大弥投手のユニホームを手に掲げて喜ぶ黒木優太投手も7年目。実は彼らは私がアマチュア野球担当記者をしていた2016年のドラフト指名選手で、取材した経験もあることから個人的に印象深い世代なのです。その翌年から私は競馬担当に異動になったため、その後に取材する機会はありませんでしたが、もちろん佐々木千隼投手は大学4年でのブレイクもあって「ドラ1候補」として追いかけた選手の1人でした。

 ファンの立場となって外野から応援してみると、プロ入り後の成績は正直もどかしいものがあります。ルーキーイヤーの2017年に4勝を挙げて、リリーフに転向した2021年にはセットアッパーとして54試合登板で8勝1敗26ホールドで防御率1.26と待望のブレイクを果たしたかと喜びましたが……。昨年は1軍で23登板も思うような結果が出ず、今年は4月1日のソフトバンク戦でリリーフした初登板を最後に2軍暮らしが続いているのはさみしい限りなのが本音です。これまで故障に泣かされた時期もありながら、「外れ1位」としては史上初の5球団競合となった素材の良さは間違いないと今でも信じています。