阪神タイガースが18年ぶりの優勝を決めた今シーズン。優勝した9月14日は仕事で関西に帰っていたのですが、関西ローカルの全局が朝方まで生放送の優勝特番を組み、岡田彰布監督、そして主力選手達が全局をハシゴ。
最後のほう、森下翔太選手は寝落ちするんじゃないかという表情でインタビューを受けていました。
道頓堀ダイブの元祖は……巨人ファン!?
2003年の優勝時には5000人を超えた【道頓堀ダイブ】は、今年は大阪府警の努力の甲斐あってわずか26人。
ご存じの方もいるかと思いますが、初めて道頓堀に飛び込んだのは落語家の桂福若さん。1985年当時16歳のお兄さん(この時はまだ落語家ではない)は、友人とプロ野球のセ・リーグでどこが優勝するかの賭けをしていて、大ファンだった巨人に賭けました。そして、「阪神が優勝したら、道頓堀に飛び込んだる!」という約束をしたんだそうです。
しかし、その年に阪神は優勝。賭けに負けたお兄さんは、有言実行で道頓堀に飛び込んだのでした。
例年問題になっている道頓堀への飛び込みのキッカケが罰ゲームで、しかも飛び込んだのは巨人ファンだったというのは上方の落語家は皆が知っています。
「落語家が皆こんなことすると思わんといておくんなはれや」
しかし、「落語家が皆こんなことすると思わんといておくんなはれや」の精神から、この事実を声高に叫ぶ落語家はいませんし、もちろん現役の落語家にダイブするような人はいないと断言いたします。
その証拠として、2005年の優勝の時に道頓堀に繰り出していた後輩の笑福亭飛梅(とびうめ)さんはある行動に出ました。
皆が狂喜乱舞する中、ふと見ると全裸の男性がまさに飛び込もうとしていました。
我々笑福亭一門の落語家は、入門すると3年間の厳しい修行生活に入ります。その厳しい修行を耐えて、ようやく落語家として生きていくことができる。ですので、「全裸で飛び込んではいけない」ということが分かるわけです。
普通の人は修行しなくても分かるんですが、落語家になろうというような人間は修行をしないと分からない人もいる(笑)。
飛梅くんはその全裸のおっちゃんに向かって「おっちゃん! そんな格好で飛び込んだら捕まるで!!」と注意したのでした。
しかしそのおっちゃん、飛梅くんの方に振り向いて「靴下履いてるからええねや!」と言って堀に飛び込んでいったそうです。
皆様、関西に【靴下を履いていれば全裸ではない】というローカルルールはありませんので、関西を訪れた際はくれぐれもご注意ください。
上方落語家でヤクルトファンで良かったこと
そんな関西には、大阪と神戸に「天満天神繁昌亭」と「神戸新開地喜楽館」という2つの寄席があります。喜楽館では毎年「プロ野球応援ウィーク」と題して、各球団のファンの落語家が勢揃いし落語にトークにと花を咲かせる楽しい催しがあります。
次回は11月13~19日に開催されるのですが、上方落語家でヤクルトファンは私しかいないというのもあって、毎回レギュラーで出させていただいているんです。そしてこの時ばかりは落語好きというよりは野球好きの方(大半が阪神ファン)がお越しくださいます。
タイガースのユニフォームでほぼほぼ黄色く染まる客席。ですので、巨人ファンの笑福亭呂鶴(ろかく)師匠は絶対に出演しないんだとか(笑)。
この1週間だけは各々の球団歌が出囃子(登場曲)になるんですが、阪神ファンの月亭八方師匠や桂小文枝師匠、桂吉弥兄さんらが『六甲おろし』で登場するとやはり盛り上がります。
厳密に言うとヤクルトの球団歌は【We Are The Swallows】なんですが、僕のこの1週間の出囃子は【東京音頭】。
もともと僕が使っている出囃子は【祭囃子】という割とハイテンポで賑やかな曲なので、三味線と太鼓で緩やかに奏でる東京音頭がいつもと違って物凄く心地良いんです。
ですが、この1週間はその心地良い出囃子がツカミになる。流れた瞬間にお客様がドッと笑うんです。
座布団に座って第一声、「僕、ヤクルトファンなんです」と言うだけでまたドーンとウケるという、まるで天国のような高座なんです。
ごくたまに、無謀にもスワローズユニを着てくださっているお客様がいらっしゃるんですが、そのお客様に「勇気ありますねー。帰り道、お気をつけくださいませ」でまたドーンとウケる。
落語会に来てくださるお客様は基本的にシャレが分かる方々なので、「神宮でスワローズファンより大きい声で応援するのやめてください!」とか思わず言っちゃう。