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「靴店からスタートした新宿メトログループ(旧・新宿企業株式会社)は、1960年に『喫茶西武1号店』をオープンします。と言っても、場所は東口ではなく、西武新宿線新宿駅の目の前。現在、カラオケルーム歌広場がある場所にありました。当時、ここに弊社の西武ビルというビルがあり、その中に『喫茶西武1号店』ができたんですね。珈琲西武という店名は、そのときの名残が今に続いているんです」(青木さん、以下同)

 1951年(昭和26年)に発刊された『東京案内記』(編・木村毅)という、戦後まもない東京の観光、生活、娯楽などの状況をつづった本がある。この本の中で、戦前の東京は乱立したカフェ(カフェー)がエロを含むサービス合戦が激化したことで、手軽に遊べる存在ではなくなったことが記されている。その結果、アルコール類を置かない新興喫茶や社交喫茶が登場し、酒を置かない純粋な喫茶店は、カフェとの区別化を図るために、わざわざ「純喫茶」と断るようになったと説明されている。

すでに一度、閉店・移転を経験

 先の『東京案内記』や『大東京繁昌記山手篇』を読むと、この時代、新宿が銀座に次ぐ東京第二の盛り場であったことがわかる。中でも、カフェ・新興喫茶の一大エリアが広がっていたのが、新宿駅東口から三越裏にかけての一帯だった。エビスカルメン、新宿ハレム、ニユウダイヤといった大箱の店舗が軒を連ねていたといい、新宿メトログループはこの激戦区に自社ビルを建て、1964年に再オープンを果たす。『珈琲西武 本店』は、閉店・店舗移転を経験しているのである。

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「再オープン当時、『珈琲西武 本店』の2階フロアには噴水があったほどで、競合他社に負けないように徹底して内観にこだわったそうです。当店の象徴とも言えるステンドグラスの天井照明も、その一環として作製されました」

 今、私たちが「映える」といってカメラに収める『珈琲西武 本店』のステンドグラスは、新宿の華やかなりし喫茶文化の残光を放っていると言っていい。

天井に光り輝くステンドグラス(写真提供:新宿メトログループ)

「現在は2階と3階が喫茶スペースになっていますが、かつては4階が存在し、カップルシートや同伴席がありました。平日はサラリーマンの方やデパートで働く人々が憩いの場として利用し、休日は新宿厚生年金会館(東京厚生年金会館)や新宿御苑に出かける方々が利用していたと聞きます。時代とともに、『珈琲西武 本店』も変化していったんですね」