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「偏食がひどく、暴言を吐く」発達障害の疑いで小児科を受診した4歳女児の家庭で起きていたこと

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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「発達障害のような」行動をする4歳のAちゃん

学校などから「発達障害では?」と指摘されて、私のところに相談にくる事例の中には、医学的には発達障害の診断がつかない例も数多く含まれています。私はそのような例を「発達障害もどき」と呼んでいます。発達障害もどきとは何かを大まかにお伝えすると、「発達障害の診断がつかないのに、発達障害と見分けのつかない症候を示している状態」を指します。これは、私が診療を通して出会った子どもたちの症候を見る中でつくった言葉で、そういった診断名があるわけではないことを、ご注意ください。

発達障害は「先天的な脳の機能障害」と定義されるため、診断のためには「生まれたときからの成育歴」を聞き、それを診断基準に照らし合わせる必要があるのですが、成育歴にまったく問題はなくてもあたかも「発達障害のような」行動(*落ち着きがない、集団生活に対応できない、衝動性が高いなど)が見られる子どもがいます。このような子どもたちによく見られるのが、生活リズムの乱れです。

Aちゃんは当時4歳の女の子でした。偏食がひどく、お友達を叩いたり暴言を吐いたりするなど、発達障害でみられる問題行動が幼稚園で観察されていました。Aちゃんのご家庭では、お父さんが帰ってくるのがいつも23時頃だったそうです。なので、なんとAちゃんとお母さんはお父さんが帰る夜中まで起きて帰りを待っていたのです。就寝は夜中の2時くらい。当然、Aちゃんは朝、スムーズに起きられません。

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生活リズムを立て直すだけで「気になる言動」が消えた

私は、そういった生活の話を聞いた上で、Aちゃんのお母さんに父親の帰りを待っていないで早く寝て、Aちゃんを朝7時には起こすことが大切だと話したところ、お母さんも納得して、生活の立て直しを実践してくれたのです。生活を変えてからというもの、Aちゃんにはさまざまな変化が起きました。

夜8時には眠くなって寝つくようになったのです。さらに、朝ごはんもきちんと食べるようになり、幼稚園でもそれまでは自分から友達の輪に加わることがなかったのが、自分から仲間に入り、コミュニケーションを楽しめるようになったそうです。友だちとのトラブルもなくなり、落ち着いて字まで書けるようになり、何をするにも集中できるようになったとのこと。生活リズムを立て直すだけで、Aちゃんの気になる言動がみるみる消えていったのです。