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2018/03/16

ああフジテレビ、いろいろ早過ぎる

『海月姫』も『となかぞ』も、現代人の多様な生き方を認めようというような視点のドラマで、これは、社会現象となった『逃げ恥』こと『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)にもあった要素だ。『逃げ恥』では、ガッキー演じる高学歴の就職難民、星野源演じるアラサー童貞、石田ゆり子演じるアラフィフ処女、古田新太演じるゲイなど、生き辛さを感じつつもそれぞれの生き方を模索していて、ドラマの提示する多様な生き方の最たるものは「契約結婚」だった。ガッキーと星野源演じるヒロインと相手役が、各々の生活を快適に行うための「契約結婚」。これが新しい!と日本中が興味をもった。そのうえ、「契約」のはずが、じょじょにお互いが惹かれ合うところも心を大いにざわつかせてくれた(「ムズキュン」という言葉が流行った)。すばらしい。

 ところが、それよりも2年近く前の2015年に、フジテレビは、月9『デート~恋とはどんなものかしら~』で、不器用な男女の「契約結婚」のドラマを放送し、一部で熱狂的に支持されていたのである。脚本は『リーガルハイ』シリーズで人気を確立した古沢良太、主演は杏と長谷川博己という申し分ない布陣だったが、視聴率的には爆発的とはいかなかった。その2年後、『逃げ恥』があんなにも跳ねるなんて誰も思ってなかっただろう。

『海月姫』(フジテレビ公式サイトより)

「逃げ恥」脚本家はフジのヤングシナリオ大賞出身

 漫画原作『逃げ恥』の脚本を書いたのは野木亜紀子。それで一躍、スターダムに駆け上がり、古沢良太と対談する(『美術手帖』のドラマ特集で)までになった野木が書いて、1月期の最もおもしろいドラマと話題の『アンナチュラル』(TBS)も、コンサバになりがちな医療ミステリーに、現代性(登場人物のあけすけな生態や会話など)や社会派な視点を盛り込んだ、フジテレビの名作『きらきらひかる』(98年)を改めて掘り起こし、21世紀仕様にアップデートした作品といえる。そもそも、野木亜紀子はフジテレビの新人脚本家の登竜門・ヤングシナリオ大賞出身。フジテレビで何本か仕事をした後、TBS の有川浩原作ものの脚本で力をつけていまに至っている。『カルテット』(17年)で人気が再燃した坂元裕二だって、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(16年)を最後の月9と宣言して書き終えた後、はじめてTBSで書いたオリジナルドラマが『カルテット』である。彼もヤングシナリオ大賞出身で、『東京ラブストーリー』で一世を風靡した、生まれも育ちもフジテレビっこだ。

高橋一生もきっかけはフジテレビ!?

 映画化が控える『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON』(17年)の出現まで、月9最後のヒットドラマとも言えそうだった『信長協奏曲』(14年)も、時代劇をSFと恋でコーティングした新たな鉱脈で、いま、時代劇×タイムスリップ×恋の法則でNHKの『アシガール』(17年/ 黒島結菜の足軽女子高生がかわいくて、18年に続編決定)に引き継がれ、密かに盛り上がっている。大河ドラマ『おんな城主 直虎』(17年)で日本中の女子を悶絶させた、政次こと高橋一生も、森下佳子が『信長協奏曲』の高橋を見たことがきっかけで出演することになったという。

 ああ、ことごとく、フジテレビ、いろいろ早過ぎる。

 持ってかれてばかりではないか。それはつまり、タイミングさえ合えば、またフジテレビが時代を牽引する可能性を示唆しているといってもいい。『海月姫』『となかぞ』のみならず、17年、10月期の『刑事ゆがみ』(浅野忠信、神木隆之介)も視聴率はふるわなかったものの、一風変わった刑事ドラマで、見巧者の受けは良かった。だから、ここは腐らず、波が来るのを待つしかない。まずは、古沢良太の『デート~』以来の月9『コンフィデンスマンJP』(4月から)が波を変えることを期待したい。古沢さん、がんばってください。

『隣の家族は青く見える』(フジテレビ公式サイトより)