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「おい、なにしとんや」パソコンの画面をのぞき込む私に、警察官のひとりが大声で怒鳴った。「大学の仕事をしています」「まぁええわ。後でパソコンもとっていくからな。はよ画面閉じとけや」。このような状況で学生さんたちと話をすることは到底できない。私は、警察官の目を盗んで、急いで同僚に短文のチャットを送った。「急な用件が入ってしまいました。代わってもらえませんか?」

 事件当時の服やリュックサック、航空券のチケット、スマホ、iPadなど、警察官たちは押収対象物とされるものを探し出して次々ととっていく。

「スマホとかiPadはロックかけてへんやろな」「もともと私はロックかけない派ですよ。実際かかってないじゃないですか」「それやったらええわ、かかっとったら壊すぞ」

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(写真=徳間書店提供)

iPad、預金通帳、パスポート、スニーカーが次々と押収対象に

「おい、これもや」警察官は、私が手に持っていたiPadも出すように要求した。「これは事件の後に購入したものなので無関係です」と私は説明した。実際、事件当時に飛行機の中で使っていたiPadは、今しがた提出した。しかし、こちらは事件の後に買ったもので無関係だ。差押対象にはならないはずである。「事件の後に買ったものかどうかなんか分からへんやろ」と警察官が言う。私は契約書類を見せて、購入日を示した。「その契約書類のもんが、その持っているのと同じとは限らへんやろ」。もはや滅茶苦茶な言いがかりである。さらに私は機種名が同じであることも示した。なおもその警察官は納得しない。「もうええわ、後でとっていくぞ」。いったん、iPad押収は保留になり、彼は別の箇所の捜索に向かった。

 当初4人いた警察官は、いつの間にかさらに2人加わり、6人体制となっていた。狭いアパートに大きな男たちがひしめき合い、ブツを探してあちらこちら動き回る。ふと目をやると、床に踏みつぶされたカップラーメンが転がっていた。底が割れて粉が出ている。「誰が踏んだのですか?」私はカップを手にとり、それを見せた。「知らんがな」警察官たちはしらばくれる。室内は、警察の物色でどんどん荒らされていった。

 警察官のひとりが、不意に私の足を踏んできた。「足踏まないでくださいよ」と私はその警察官を注意した。するとその警察官は「お前も何回も踏んどんのやろが」と逆上した。「じゃあ、私がいつどこで踏んだと言うんですか? 言ってくださいよ」。言いがかりも甚だしい。「いちいち、ごちゃごちゃ言うなや」と警察官はすごむ。みずからの行為をかえりみることもなくただ横暴を続ける大阪府警。市民の家で何をしてもいいと警察は考えているのだろう。民主主義の時代に、いまだにこのような体育会系の捜査をしているのである。