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「秦剛は深夜2時に博物館現地で準備状況の最終確認を求めた。その際、中国側は階段のどの段に差し掛かったら音楽が鳴るのかなど、細部にわたるまで一つ一つの動きを確認したという。たたき起こされたベラルーシ側担当者は早く寝たかったため、適当な段を指差してその場を乗り切った」

国務委員の職位が残された意味とは

 外交部副部長を経て、2021年には駐米大使に就任。中国にとって最重要課題である対米関係を任されたということは、習近平からの信頼を勝ち得た証左でもある。

 そして、外相に抜擢されたにもかかわらず、わずか半年あまりでの解任。李氏はさらに不可解なことがあると指摘する。

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「秦剛は外交部長に加えて、国務委員という役職を兼任していた。しかし、7月25日、秦剛が任を解かれたのは外交部長だけであり、国務委員の職位は依然として残されている」

 国務委員(5名)は副総理(4名)に次ぐ要職であり、党内序列としては外相ポストよりも重要だ。これが意味するものは何か――。

秦剛前外相 ©EPA=時事

外交部内の権力闘争が原因か

 その一方で、外相解任が決定すると外交部は秦剛の活動記録を公式HPから即刻削除した。

「しかし、なんとその後、(7月)28日には秦剛の活動記録が復活した。外交部は『ホームページは更新中だった。過剰に読み解く必要はない』と釈明したが、あまりにも不自然である。このドタバタ劇は、外交部内部の混乱を示しているのではないだろうか」

 李氏はそこに外交部内の権力闘争が垣間見えると論じる。若きエリートの早すぎる出世によって、パワーバランスの乱れが生じたのではないか、と。また、香港の女性ジャーナリスト、傅暁田(ふぎょうでん)との不倫を通じた情報漏洩疑惑についても切り込んでいる。

「中国共産党エリートの末路 秦剛中国前外相はどこへ消えた」は、「文藝春秋」2023年10月号、および「文藝春秋 電子版」(9月7日公開)に掲載されている。

文藝春秋

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中国共産党エリートの末路 秦剛中国前外相はどこへ消えた