2023年8月28日に発売となった益田ミリさんの新刊『ヒトミさんの恋』。週刊文春の人気連載コミック「沢村さん家のこんな毎日」の中からの抜粋に新たな描き下ろしを加え、登場人物の一人でもある、娘・ヒトミ(40歳)の“大人の恋愛”を描いた、甘くて苦い大人のラブストーリーだ。
14歳年下の後輩と、昔片思いしていた大学の同級生との間で揺れ動く恋心。同世代の女性たちを中心に、「わかる、わかるよ」「恋愛がなくなるのではなく、恋愛も年をとる」「さらっと読めてココロが時々グサッといった感じになる」と、大きな反響を呼んでいる。
沢村家のささやかな日常を描いてきた作者の益田ミリさんに、「恋愛」でも「結婚」でもなく、「恋」を描いた背景を聞いた。
「沢村さん家のこんな毎日」:父・四朗さん(70歳)と母・典江さん(69歳)、娘のヒトミさん(40歳)という、平均年齢60歳の家族の、何気ない日常を描いたホーム・コミック。高齢の両親とその娘の日常に自分を重ねる読者も多い。週刊文春で連載中。
──平均年齢が高めの沢村家の物語は、心がじんわりあたたかくなるエピソードばかりで、まるで自分の家族の物語のように感じている読者も多いと思います。「家族全員が主人公」のはずの沢村家シリーズで、なぜ今回ヒトミさんを主人公に描こうと思ったのですか?
連載では、彼女が仕事帰りに同僚たちと食事をしつつおしゃべりを楽しむシーンがよく出てきます。いわゆる女子会です。いつかこのシーンだけをまとめてみるのも楽しいんじゃないかなと考えていたのですが、2022年に連載が500回を迎えたのを機に、ヒトミさんにスポットを当てた漫画を描きました。彼女たちの過去のおしゃべりシーンも織り交ぜて、これまでの連載からの抜粋と、新たに描き下ろした漫画の合作という構成になっています。
──「40歳女性、独身、高齢の親と一緒に実家暮らし」というヒトミさんの設定は、ともすれば老親の介護や、親が亡くなった後のおひとりさま問題など、ネガティブな要素も浮かんできます。お見合いや結婚、恋愛ではなく、あえて「恋」とした意図を教えてください。