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「いままさに日本で観られるべき映画」『オッペンハイマー』を観た東浩紀氏が語る“米国リベラリズム”の強さ

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 だが、国内で公開されない現状は「もったいないと思います」という。

「社会は複雑で、加害と被害ですべてが割り切れるわけではありません。誰しもが“被害者”と同時に“加害者”になる可能性を持っている。ある一面では“被害者”である人が、別の集団では“加害者”として間違いを犯してしまうことだってあります。

『オッペンハイマー』はまさにその難しさを描いています。オッペンハイマーはユダヤ系でナチスの暴力を止めるために原爆を開発した。でもそれは巨大な加害を引き起こしてしまった。ウクライナ戦争が起きて核抑止が問題になっているいま、これはまさに日本で観られるべき映画ではないでしょうか」

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日本は過去を語り直せていない

 東氏は、原爆の開発を深く後悔し、人間関係でも失敗を犯す“間違う科学者”の姿こそが同作のテーマだと指摘する。そして、その姿勢は、東氏が今回、訪問先のワシントンDCで触れた、米国における「訂正する力」とも共通するという。

東浩紀氏 🄫文藝春秋

「彼の国では、『政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)』が自己目的化せず、リベラルもきちんと未来を向いている。アメリカも昔はいろいろ間違いを犯した。でも、過去を訂正すれば、この国はより強くなる、という信念があります。

 日本はそれが無い。過去は反省するか忘れるかどっちかです。語り直せていない」

 また、ワシントンで感じた「アメリカン・デモクラシー」のバージョンアップや、リベラリズムの強さについても、東氏は詳しく語った。

 東氏へのロングインタビュー「問題作『オッペンハイマー』を観て来た」は、「文藝春秋」2023年10月号(9月8日発売、「文藝春秋 電子版」では9月7日公開)に掲載されている。

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問題作『オッペンハイマー』を観て来た
「いままさに日本で観られるべき映画」『オッペンハイマー』を観た東浩紀氏が語る“米国リベラリズム”の強さ

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