他の弟妹たちにも強い個性と見せ場があり、それがたびたび“家庭崩壊”を呼んで、さながらジェットコースターホームドラマのように視聴者を釘付けにした。
脚本はすでに「101回目のプロポーズ」(91)で売れっ子になっていた野島伸司。「高校教師」(93)、「未成年」(95)などまさに時代の寵児だった。
決めゼリフ「そこに愛はあるのかい?」が流行語になったり『ど根性ガエル』のピョン吉Tシャツを着て、『チキチキマシン猛レース』に登場する犬の“ケンケン笑い”をするなど江口洋介の存在感は大きかったが、「こんなかっこいい人が日本にいるのか」と人々を驚かせたのが当時24歳の福山だった。
研修医というエリートの役で、札束を見せびらかすようなバブルっぽさと、冷笑的な雰囲気を兼ね備えた福山のキャラクターはまさに“90年代”っぽいキャラクター。
70~80年代っぽさを前面に出した江口との対比は鮮やかで、ストーリーの中では江口が主人公だが、時代にフィットしていたのは福山のクールさの方だった。
97年の続編『ひとつ屋根の下2』で、クールだった福山が江口の熱さに感化される場面は涙なしには観られない。
5時間待たされた福山は文句を言うどころか…
去る2023年4月、三男役のいしだ壱成がバラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ)で実父の石田純一と共演した際に、『ひとつ屋根の下』のエピソードを披露したことが話題になった。
泣く芝居ができずに福山とスタッフたちを約5時間待たせてしまったが結局涙を流せなかったが、先輩の福山は文句を言うどころか「お疲れ、お疲れ」と優しく声をかけてくれたというのだ。
福山とはいまだに交流があり、「たまにすごくポエティックなメールをいただくんです。『生きたいようにしびれてるか』とか『やりたいことやれてるか』とか『自分のこと好きでいられてるか』とか(心配してくれる)。本当にありがたいです」と、感謝の想いを語った。
いしだにとって福山は演技の外でも「お兄ちゃん」だったのだ。