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「西武池袋・ヨドバシ」騒動のウラで進む、外資系ファンドの“日本席巻”

2023/09/12
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 西武百貨店池袋本店は全国百貨店店舗別売上高ランキング(2022年)で、伊勢丹新宿本店(2536億円)、阪急うめだ本店(2006億円)に次ぐ第3位(1540億円)に位置する日本を代表する百貨店のひとつだ。

8月31日、そごう・西武労働組合の組合員によるストライキのため、臨時休業となった西武池袋本店。百貨店業界のストは61年ぶり ©時事通信社

 この店舗の行く末について今、世間が喧しい。そごう・西武の労働組合の組合員によるストライキのため、8月31日には臨時休業となった。ことの発端は2022年1月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、傘下の百貨店事業会社そごう・西武を売却する準備に入ったという報道だった。その後入札による売却が発表されるや、1日あたり乗降客数258万人を記録する池袋駅前の一等地にある西武池袋本店などの不動産価値などに目を付けた大手デベロッパーや外資系不動産投資ファンドなどの名が新聞や雑誌を賑わせた。だが、同年5月に行われた第2次入札で国内勢は姿を消し、参加したのは米国系のフォートレス・インベストメント・グループ、ローンスターおよびシンガポール系のGICの3社になった。

わずか17年で手放した理由

 セブン&アイHDは2006年、当時そごうと西武百貨店の持ち株会社だったミレニアムリテイリンググループを約2000億円で買収。悲願だった百貨店専門店事業へ進出を果たした。

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 だが買収後わずか17年で手放すことになったのには理由がある。百貨店事業の低業績だ。

 事業会社そごう・西武の業績は2022年度で営業収益4963億円。10年前(2011年度は8110億円)のわずか6割水準に落ち込んでいる。純利益ベースでは130億円の赤字で4期連続となる。三越伊勢丹ホールディングスがコロナ禍から急回復し、史上最高益を計上しているのとは対照的な業績だ。コンビニエンス事業では他の追随を許さないセブン&アイHDも百貨店は手に負えなかったものと想像される。

 最終的に落札したのはフォートレス・インベストメント・グループで落札額は2200億円だ。フォートレスは1998年に米国ニューヨークで設立された投資ファンドで日本での活動も長く、不動産や債券運用で実績があり、ゴルフ場大手のアコーディア・ゴルフやアパート賃貸のレオパレス21などを傘下に抱える。だが、事業再生での実績は未知数で、当初応札が噂されたブラックストーンなどの事業再生系ファンドとは異なる性格を持っている。この点が実は今回の騒動の発端になったともいえる。