フォートレスの知られざる一面
さてこのハゲタカ的行動をとるフォートレスは実はつい最近までソフトバンクグループがその株式を所有していたことはあまり知られていない。ソフトバンクは2017年にフォートレスを33億ドル(当時の為替で約3729億円)で買収していたのである。ところが自社の運用ファンドの業績悪化に苦しんだソフトバンクは今年5月に4100億円でアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ政府系ファンド、ムバダラ・インベストメントに売却している。現在では株式の30%はフォートレスの経営陣、残りの70%をムバダラが保有している。
つまり西武百貨店池袋本店売買の美味しい部分は、すべて外資系に持っていかれ、事業をうまく再生することができず、また不動産価値をも見誤ったセブン&アイHDと、投資ファンドとして十分な成果を上げる前に撤退を余儀なくされ儲けそこなったソフトバンクグループが臍を噛む形になったのである。
私からみれば、どうも外資系投資ファンドなどに日本がいいようにもてあそばれているように映る。企業M&Aしかり、都心一等地不動産の価値創出しかりである。
池袋全体のエリア価値は?
では西武百貨店池袋本店の不動産を手に入れたヨドバシカメラはどうだろうか。この会社は主要都市一等地に不動産を所有する形で店舗を展開しており、都内では悲願だった池袋を手に入れたといえるだろう。これから駅周辺では本店を構えるビックカメラやヤマダ電機とのし烈な争いが繰り広げられるに違いない。
だが、こうした駅前に大規模な店舗を所有していく方式は、今後とも正しい方程式とは言えまい。EC取引が主体となり、電気製品のような規格品を現場で見て、触って買うという形態がいつまで続くかについては疑問が残るところである。
それでもなんといっても駅前である。池袋駅前は不動産としての価値は十分にあり、店舗営業が立ち行かなくなったとしても再開発すればよい。建替えて地上50階くらいのオフィスビルやホテル、劇場、ホール、インターナショナルスクール、1戸数億もするようなマンション、低層部にちょこっとヨドバシカメラを残すようにすればあとはなんとでもなるだろう。
でもこの方程式だって将来にわたって通用するのかはわからない。でも日本人としては少し悔しい気持ちもある。エリア価値の維持や向上に、区役所やメディアが言うように、ルイ・ヴィトンやエルメスがいつでも必要なテナントであるかはわからないが、ヨドバシカメラにはぜひ3000億円以上の価値を創出して、池袋全体のエリア価値を高めてもらいたいものだ。