その後のキャリアでも、周りをあっと驚かせるような言動はほとんどしないが、体形やパフォーマンスなど細部まで気を使って「周囲の人が期待する役割を演じきること」に徹してきた。
その意味では、火中の栗を拾うジャニーズ新社長就任という決断もいかにも“ヒガシらしい”ものと言えることになるかもしれない。
彼の優等生エピソードは他にもある。
今年1月に東京・六本木のテレビ朝日で行われた主演作『必殺仕事人』の記者会見に共演の遠藤憲一、松岡昌宏、和久井映見らとともに出席したときのことだ。
遠藤憲一が「今年はストレッチを頑張りたい。2008年にヒガシくんからストレッチマットとジャージをいただいたんです。(中略)ストレッチマットは去年から使い始めました」と紹介すると、東山はすかさず「使うまでにずいぶん時間がかかったね(笑)」とツッコミ。日々トレーニングを欠かさない自身の生真面目ぶりをアピールした。
プライベートでは2010年に女優の木村佳乃と結婚し、ビッグカップルの誕生は世間を賑わせた。
工藤静香と結婚した木村拓哉に退所の噂がある中で、東山が社長に就任するという対比は2人の生き方を象徴しているようでなんとも印象的だ。
「よかったら持って来ましょうか?」
筆者は以前、時代劇ドラマの現場リポートで東山本人を見かけたことがある。(『遠山の金さん』か『必殺仕事人2007』だったと記憶している)。
単独インタビューではなく、複数メディアが入っての現場リポートだったが、控え室で撮影開始を待っていると、まげ姿で右手にお茶の入った紙コップを持った東山がふらりと現れたのだ。
笑顔で「お疲れさまです」と言ったあと、「みなさんも、あちらにあったかいお茶があるからどうぞ。よかったら持って来ましょうか?」と続けるので、我々はびっくりしてしまった。
それを聞いたスタッフが慌てて駆け寄り、「東山さん、それはこちらでやりますから」と紙コップを受け取っていたが、名前もしらないメディアの人間に対して自然な笑顔でお茶を振る舞う姿が記憶に残っている。
ただ、いかに東山の人柄自体が善良なものだとしても、ジャニーズ事務所に40年以上所属し、ジャニー喜多川氏の性加害について「見て見ぬふりをしていたのでは」という疑惑についてはもちろん真摯な対応が求められるだろう。