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強い言葉を使う一方で、社名は変更しないアンバランス

 さらに違和感があったのは、東山氏の厳しい物言いだ。自身の覚悟について「命をかけて取り組んでいく」「命を削って」とした表現は、芝居がかり現実味に乏しく、気負い過ぎた感がある。

 ジャニー氏の性加害に対しても同じで「人類史上最も愚かな事件」「やっていることは鬼畜の所業」「今となっては大変恥じております」と極端なのに、語気もトーンも変わらずさらりと言っているように見えてしまう。

 しかもそこまで言っておきながら「ジャニーズ事務所」という社名は変更しないという。言葉の強さ、厳しさと現実が重ならない印象は拭えない。

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ジャニーズ事務所 ©AFLO

 事務所名変更に関する質問の時、東山氏はジャニーズという名前には「培ってきたプライドだとかエネルギーだとか」と話しながら、身体を左右に揺らした。ジャニーズという名前への強い思いが感じられる。

 そこにあるのは「アンビバレンス」だろう。アンビバレンスとは、同時に相反する感情を持ったり、相反する態度を示すことである。絶対的存在であり父と慕っていたジャニー氏には「今は愛情はほとんどない」と言うが、これも極端だ。

謝罪する三人 ⓒ文藝春秋

 表現が極端なほど相反する感情の強さを感じさせるため、内面では複雑に絡み合う葛藤があると思われる。

自身の体験を自身の言葉で述べた井ノ原氏

 この会見で聞く人の心にすんなり入ってきたのは井ノ原氏の言葉だ。会見冒頭は口をもごもごと動かして自身の不安をなだめるような仕草も見られたが、耳当たりの良い言葉を並べることなく、どのような質問にも自身の体験を自身の言葉で述べ、「ジャニーさんだったらどうしただろうと考えることが一番危険」と警告を発した。

 数多くのタレントを擁し、数限りないファンを抱え、業界に君臨してきた事務所が、どこまで過去と決別できるのか。その難しさを感じさせた会見だった。