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取引先のセクハラでうつに…「労災も労働相談も対象外」フリーランスという自由を得たらすべて自己責任なのか

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genre : ビジネス, 働き方, 社会

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雇用者なら健康保険から傷病手当があるが、フリーランスなどが加入する国民健康保険には傷病手当が原則として、ない。コロナの感染拡大のなか、「労働者」である非正規雇用のコロナ感染をめぐっては自治体の傷病手当に国が財政支援する特例措置が取られたものの、「自営」とされるフリーランスは対象外で、フリーランスの状況に配慮した一部自治体だけが単独予算で傷病手当を支給した。

また、雇用されていれば、全額企業が負担する労災保険の適用を受けられる。2010年に派遣女性が起こした労災行政訴訟を契機に、セクハラによるうつなどの健康障害も労働災害と認定されるようになった。だが、フリーランスは原則、労災保険も対象外だった。このままではだめになる、未払い報酬の回収くらいはできないか、とエイコは体を引きずるようにして行政の労働相談窓口に出かけた。

「フリーランスは自営扱いだから労働相談の対象外」

ここでも、「フリーランスは自営扱いだから労基署や労働局による相談の対象外」と言われ、労組を紹介された。その支援で、なんとか会社に対して報酬の未払い分を請求し、2020年1月の通院にもこぎつけることができた。2020年7月、体調不良を押して取引先の会社と男性にセクハラ慰謝料と未払い報酬の支払いを求める訴えを東京地裁に起こしたエイコは、2022年2月の最終意見陳述でこう訴えた。

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裁判官の皆様には、フリーランスがいまだに十分には法的に守られていないために「フリーランスに対しては何をしても大丈夫だろう」と思っている人がいること、私も含めてそんな人達に搾取され傷ついているフリーランスが大勢いること、立場が弱い人に対し、性的な行為を受け入れないことへの報復として報酬未払いなどの「経済的嫌がらせ」が行われる実態があることをご理解いただき、どうか公正な判決を書いていただきたいです。

2022年5月25日、東京地裁はそんなエイコの訴えに、勝訴判決で応えた。

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