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取引先のセクハラでうつに…「労災も労働相談も対象外」フリーランスという自由を得たらすべて自己責任なのか

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方, 社会

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「会社は下請けの社員や派遣社員など、直接雇用契約がなくても社内で働いている労働者の安全に、配慮する義務がある」としたこれまでの判例を、フリーランス女性のセクハラ被害にも広げた画期的な判決だった。

30代のシングルマザーは子どもの休校補償を受けられず困窮

ライターや「個人事業者」扱いのキャバクラ女性、演劇人などは「フリーランス」に当たる。政府の「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(2021年3月26日)で、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義されている働き方だ。

フリーランスは第二次安倍政権の「働き方改革」で推奨されてきた。だが、コロナ禍では、仕事の発注が途絶えても「自営であって労働者ではない」として、生活を支える仕組みがきわめて乏しいことが露わになった。コロナ禍は、そんな経済面での自己責任規範に加え、女性を直撃するもうひとつの自己責任規範を浮かび上がらせた。「フリーランスの育児やセクハラ被害は個人の問題」という規範だ。

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2022年4月。30代のシングルマザーで、フリーランスとして演劇関係の裏方の仕事を手掛けてきたチナツ(仮名)は、個人が(子どもの)休校の際の補償を申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業給付金」の利用を諦めかけていた。フリーランスの就業実態に合わない証明書ばかりが求められ、近いと思われるものを何とかようやく集めて送ったら、要件に合わないとして差し戻されてきた。しかも、多くのフリーランスには存在しないような書類を、追加して送るよう求められたからだ。

自営業でも申請できる「給付金」に希望を見いだしたが……

演劇、ライター、ヨガなどのインストラクター、演芸、音楽家といった仕事は、フリーランスで働く人が多い。2020年3月のコロナ禍の第1波のなかで対面制限が始まり、これらの分野の仕事は、ほぼ停止状態になった。小中学校などの一斉休校措置で働けなくなった親のために創設された「休校等助成金」からも、フリーランスは「自営業だから」と除外された。追い詰められたフリーランスたちが結束し、関係業界団体や関係労組を通じて政府に働きかけ、フリーランスが個人として申請できる制度としても、先の「給付金」が設けられた。

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