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ビッグモーターはひとごとではない…産業医が「どんな会社もブラック企業になる可能性がある」と断言するワケ

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 企業, 社会

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同調圧力は会社にとって好都合

同調圧力があることは、会社にとっては非常に好都合です。なぜなら同調圧力は、会社の和を乱す人を圧倒的に減らすことができるからです。同調圧力があると社内の秩序は保たれやすくなり、会社も管理しやすくなります。

しかも同調圧力は、いわば“暗黙の了解”なので、就業規則に書かれているわけでもなく、議論の末に明文化されたわけでもありません。誰も責任を持たなくていいように見えてしまう。よく、会社で不祥事があったときに、記者会見等で社長など経営陣が「私は知らなかった」「そんな指示はしていない」「社員が勝手にやったこと」と責任逃れをすることがありますが、このためです。

例えばビッグモーターが、店舗前の街路樹に除草剤を散布して枯らしていた問題もそうです。おそらく「除草剤をまきましょう」と会社の文書に書いてあったわけではないでしょう。書いてあっても、せいぜい「環境整備をしましょう」だと思います。

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しかしながら、こうした同調圧力がネガティブな方向に働くと、「内部告発は絶対に許さない」という空気が蔓延し、隠蔽(いんぺい)体質に発展してしまいます。同調圧力が「おかしい」と思った従業員を黙らせるようになるのです。

知らないうちに加担していることも

一般的に、同調圧力のメリットは会社側だけでなく、従業員側にもあります。同調圧力は、窮屈で自分の自由を奪われるような息苦しさを生む一方で、「従ってさえいれば、その集団から排除されない」という安心感を与えてくれるからです。あまり考える必要がなく、周りに合わせてさえいればいいので楽ですし、「省エネ」だともいえます。ですから実際は、同調圧力の存在に気付いていない人も多いですし、気付いていても、嫌がっていない人も多いように感じます。

同調圧力が、「ビジネスマナーを守る」といったところで働く分にはいいのですが、「長時間労働は当たり前」「小さなミスでもしつこく大声で叱責(しっせき)する」「仕事の能力は関係なく、年齢や性別、そのほかの特性によって評価が変わる」などの空気を助長するような、悪い方向で働くようになると、話は別です。

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