ツイッターへの課金をあきらめないイーロン・マスク。しかし、買収時から抱いていたこの野望のまえには、立ちはだかる大きな壁があった。それは、iPhone上でツイッターのアプリを握るアップル社だった。20万部突破の世界的ベストセラー『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著 井口耕二訳)から、アップルCEOとの対決篇を紹介する。
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イーロン・マスクが昨年11月に急遽導入したツイッターへの課金制度。このときは、なりすましによる大炎上という結果に終わってしまった。しかし、マスクはこの野望をあきらめてはいなかった。
そもそも課金制度の実施には、ある障壁が立ちはだかっていた。アップル社である。というのも、iPhoneにおけるツイッターのアプリを握っているのは同社だからだ。
アップル社は、アプリ購入代金やアプリ内課金の30パーセントを取っており、また個人情報やクレジットカード情報も同社内で囲い込んでいる。マスクとしては、ここを切り崩す必要があると感じていた。
そこでマスクは、アップルCEOのティム・クックに直接メールを送り、アップル社での面会アポイントメントを取り付けたのだ。
とはいえ、じつはマスクは、「アップルとはケンカをするな」との忠告をメンター投資家から事前に受けていた。アップルはツイッターの大手広告主だし、iPhoneのアプリストアから追い出されたらツイッターは確実に死んでしまうからだ。
「私も別に敵対したいわけじゃないんだよねと思ったのです。なので、いいよ、じゃあ、僕がアップル本社まで会いに行こうとかなんとか言いました」
じつはそこには、ジョブズがデザインに関わったアップル本社を見てみたいというミーハー的な気持ちもあった。
「実は、アップル本社を訪れる口実が欲しかったというのもあります。すごいって聞いてますから」
静かで穏やかな池を囲むように立つアップル社は、その美しさで有名だ。特注の曲面ガラスがはまったドーナツ状の建物は、ジョブズの細やかな指示のもと、英国の人気建築家が設計したという。