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体調が悪化してもすぐに入院することができず

 角川氏は2020年12月、心臓大動脈瘤の手術を行っている。不整脈や心房細動などの持病もあり、1日に十数錠も薬を飲まなければならなかった。それゆえ長期間の勾留には耐えられない旨を、保釈請求の際の理由に記したが、それでも保釈は認められなかった。

 勾留中に入院し、途中で病人用フロアに移された。新型コロナにも感染、そして今年2月、ある事件が起こった。手記にはこう綴られている。

<体重はみるみる落ち、体調も次第に悪化していった。そして逮捕から5カ月が過ぎた2月19日のことだ。弁護士の接見の際、一時的に気を失った。後から聞いたところによると、途中から話しかけても反応しなくなり、ぐったりして涎と鼻水を垂らしていたという。

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 だがすぐに入院は出来ない。勾留の執行停止を申し立てて、慶應病院に入院できたのは3月1日。診断結果は、一過性意識消失、肺炎、心房粗細動、薬剤性肝炎だった。入院中には39度の高熱も出た。拘置所に戻ったのは13日後である。

車椅子に乗せられ拘置所を出る ©時事通信社

「角川さんは死なないと出られません。」

 何度も倒れ、拘置所内で生活するのも辛い。何とかここから出られないのか。拘置所の医務室でそんな思いを漏らしたことがある。すると医者がこう吐き捨てるように言った。

「角川さんは死なないと出られません。出られるかどうかは、弁護士の腕次第ですよ」

 隣にいる医務官も頷いている。>

 だが角川氏が特捜部や東京拘置所の刑務官たちから受けた仕打ちはこれだけではなかった――。

「文藝春秋」11月号(10月10日発売)、および「文藝春秋 電子版」(10月9日公開)には、電通からスポンサー契約を持ちかけられたこと、検察の聴取の様子やホテルでの不意打ち逮捕、東京拘置所の狭い独居房での生活、保釈請求取り下げのための検察官の信じがたい行動、獄中で詠んだ俳句、人質司法を無くすための提案などを綴った「角川歴彦 わが囚人生活226日」が14頁にわたって掲載されている。

文藝春秋

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KADOKAWA前会長 角川歴彦 わが囚人生活226日