「それじゃダメだ、降りろっ!」と怒鳴られて泣いた日々
「1万坪(野球場3つくらい)の大きな置き場があって、そこで大小のユンボとブルドーザーで土を盛る作業をしていました。盛り土って繊細なので、上からキャタピラーで圧力かけて綺麗に盛っておかないと雨で流れるんです。バケットで叩いて、水勾配を考えて、綺麗に法面にして水がたまらないように…と考えることが多い。
しかもユンボは最小限の動きで土を動かす必要があって、無駄な動きをすると『それじゃダメだ、降りろっ!』って社長に怒鳴られるんです。怒られるたびに鼻水垂らしてビービー泣いたのも今となってはいい思い出です(笑)」
決して楽な環境ではなかったがKaoriさんは「どうすれば一番効率がいいかを自分で考えて進めるって面白いじゃないですか」とも語る。まさに職人の世界である。
「その会社では合計6年働かせてもらったんですが、上達してきた手応えがあるとやっぱり現場に出たくなるんですよ。会社時代も何回か臨時で現場に出ましたが、やっぱり楽しい。特に私は“法切り”っていう作業が好きで、誤差が数ミリしか許されないんですが、できたときの達成感がすごい。それで『現場に出たいな』という気持ちがどんどん募っていきました」
その頃には長男が中学生、長女は小学校の高学年になり、徐々に手も離れてきていたことが大きかったという。
「ちょうど会社が土工事の仕事を減らしていた時期で、とてもお世話になった会社だけどスキルアップのためにはやめるしかないなって。それで会社に所属するよりはいろんな現場に行っていろんな会社のやり方を見た方がスキルアップになると思い、2021年に思い切って独立しました。コネもないし、技術もない、現場の知識もなくて不安だらけのスタートでした」