最近は建設・土木の工事現場で女性作業員の姿を見かけることも増えたが、“男の聖域”という雰囲気はまだまだ強い。そんな中、“ユンボ”(パワーショベルなどの切削用建設機械)を駆る1人の女性がいる。キャタピラーの台車に載った1本の長いアームを旋回しながら縦横無尽に操り、地面を掘り、山を削る。

 Kaoriさん(38)は9年前からユンボの仕事を始め、一昨年から“重機女子”としてインスタグラムで発信を開始した。現在、フォロワーは1万人を超え、重機関連の雑誌やYouTubeの番組、イベント等では引っ張りだこになっている。

  Kaoriさんはなぜ29歳の時にユンボの道へ進むことを決意したのか、そして女性が工事現場で働くとはどういうことか。半生を振り返りながら、その問いに答えてもらった。

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大型ユンボを運転するkaoriさん ©文藝春秋 撮影・石川啓次

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 Kaoriさんは長野県の岡谷市で生まれ、自然が豊かな山の麓で育ったという。

「中3までは長野で育ちました。熊が出るような山が友だちで、いつも虫を捕まえて遊んでいました。坂が多くて通学には1時間くらいかかって、冬は膝まで雪に埋もれてズボズボ歩いていた。いま足場が悪い過酷な工事現場でも平気なのは、大自然の中で育ったおかげかもしれません」

「両親の仲が悪くて、中学の頃には別居するように…」

 牧歌的な自然環境でのびのび育ったKaoriさんだが、家庭環境は決して穏やかではなかった。

 

「両親の仲が悪くて、中学の頃には別居するようになっていました。父の借金のせいで母は働きづめで家に居ないので、4歳下の弟と11歳下の妹の面倒を見たり、家事もかなり手伝っていました」

 しかしそこは多感な年頃、中学2年になる頃にKaoriさんは“荒れた”生活を送っていたという。