パート先の窓からパワフルに地面を掘り返すユンボを眺めたKaoriさんは、そのダイナミックかつ繊細な動きに虜になり、「この仕事をしたい」と熱望するようになった。

 ユンボの運転席から降りてきた男性が女性の自分と変わらない背格好なのを見て、自分にもユンボの操作はできるのでは、と感じるとそこからの行動は早かった。

巨大なユンボに乗り込むKaoriさん ©文藝春秋 撮影・石川啓次

「でも当時は『ユンボ』という名前もわからないじゃないですか。なんて検索していいかもわからないし、必要な資格も問い合わせ先もわからずモヤモヤしていました。でもある日、近くのコンビニに行ったらユンボ運転手のおじさんがいて、私の顔を見て『いつもオレのこと見てる子だよね』って言ってきたんです。見てたのは“オレ”じゃなくて“機械”の方ですって言いかけましたけど(笑)。

ADVERTISEMENT

 でもせっかくだと思って運転手さんに『重機に乗る仕事をするにはどうすればいいですか』と聞いたら必要な資格を教えてくれて『取ってきたら乗せてやるよ』と。それで乗りたい! 速攻で資格を取りにいきました」

「まずは大型特殊免許を一発試験で取ることにしました」

 

 工事現場などで使う重機を操作するには、それぞれの機械ごとの資格が必要になる。ユンボ(重量3トン以上)の場合は「車両系建設機械運転技能講習」を受講したうえで、修了試験に合格する必要がある。

「ユンボの資格は大変で、1日8時間の講習を最短5日間(38時間)受ける必要があるんですが、当時は下の子が一時保育だったのでフルタイムで5日も預けるのは無理。でも調べたらホイールローダーなどを運転できる大型特殊免許があれば、ユンボの講習が最短2日に短縮できると知って、まずは大型特殊免許を一発試験で取ることにしました。受験料はそんなに高くないし、何度か受ければその内に受かるでしょ、と思って」