194万人の「人生の風景」が京セラドームにある
それから30年後の2022年・春。僕は25年間在籍した会社を辞めた。実に1992年の浪人生以来の「素浪人」になった。僕はもう何者でもない。なんの肩書きも持っていない。全てを脱ぎ捨てて裸足で人生という道を歩いている感覚はたまらない快感だった。どうしようもないわたしが歩いてゐる、と何度も呟きたくなる。でも今回もまた僕の人生の隣にはバファローズという名に生まれ変わったオリックスがいた。
僕の今の多幸感が1992年と酷似しているのは間違いなく僕個人の人生の風景とオリックスファンとしての感覚が深く絡み合っているからだ。そしておそらく日本中全ての野球ファンが、応援するチームの様々なシーンを自分の人生の軌跡と共に回想しているはずだ。だからこそ野球ファンはやめられないのだと思う。
2023年。オリックスの観客動員数は過去最高194万7453人。1試合平均で2万7048人。パ・リーグ2位の数字だ。これほど多くのファンが「リーグ3連覇」の感動を味わった。その全員に「人生の風景」があるわけだ。
今年、中学進学だったオリックスファン。
今年、初めて大切な人ができたオリックスファン。
今年、高校卒業だったオリックスファン。
今年、大切な人との別れを経験してしまったオリックスファン。
今年、就職活動だったオリックスファン。
今年、プロポーズされたオリックスファン。
今年、プロポーズしたオリックスファン。
今年、結婚10周年だったオリックスファン。
今年、転職したオリックスファン。
そこには数えきれないほどの喜怒哀楽があり、そんなオリックスファン全員が貴重な人生の半日を使って京セラドームに集った結果が194万人なのだ。想像するだけでちょっと楽しい。だって僕らの人生の隣には眩いばかりの黄金時代を迎えたオリックス・バファローズが寄り添ってくれているのだ。この贅沢な時間をオリックスファン全員で堪能したい。
そして10月18日には、各々大切な人生の風景と共に再び京セラドームに集結しようではありませんか。今年最後の盛大な祭りが始まるのだから。
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