セ・パの人気の差が顕著だった当時としては画期的な出来事
1980年、打高投低だった時代のパ・リーグにおいて投手部門のタイトルを総ナメ、“アメージング・ルーキー”と称された木田勇が、その年のオフにリリースした『青春・I TRY MY BEST』。安部恭弘作曲の“ラグジュアリー歌謡”を照れ臭そうに歌っている。パ・リーグの、それも新人投手が歌ってレコードを出すというのは、セ・パの人気の差が顕著だった当時としては画期的な出来事だった。カップリングの、ブラス・セクションがどことなく『プロ野球ニュース』“今日のホームラン”でお馴染みのジェームス・ラスト・バンド『ヴァイブレイションズ』を想起させるインスト曲『MR.ガッツポーズのテーマ』も聴き逃せない。この音盤が“明”ならば、“暗”なのが森安敏明。ファイターズの前身、東映フライヤーズにドラフト1位入団。ルーキー・イヤーの1966年、速球を武器に11勝を挙げて将来のエースを嘱望されていたが、1970年の黒い霧事件により永久追放処分となった。その彼が球界を去った2年後に森安利明と改名、“ソウル・オブ・エンカ”と銘打って自主制作した『ひとりぐらいは』。曲の中盤、彼自身の筆によるポエトリー・リーディングは、追放後の苦闘の日々が偲ばれる。
作業中、中村さんが「この編集会議って、やってる事はまんま音球だから、次回の選定会議は“公開編集会議”イベントとしてお客さんも入れてやりませんか?」と言い出した。さすがは“マーケティングなんか糞くらえ!”を社是とする出版社代表、発想が型破りである。そりゃ面白いと賛同し、かくして第3回編集会議は“入場:1000円(1ドリンク付き)の公開編集会議”となった。
10月8日、出版社・東京キララ社内なのかイベントスペース神保町RRRなのか、もはや判然としない混沌とした中、第3回編集会議は“開催”され、150曲選定から漏れた中からアナログ7インチ盤をピックアップする作業となった。いつもの音球ではめったにかけない音盤ばかりなので勝手が違ったが、楽曲によっては新たな魅力に気付かされる場面もあり、「これって“一軍入り”してもいいんじゃない?」「一軍登録・同抹消もアリですね」と、来場のギャラリーも巻き込んで会議は白熱した。
次の第4回編集会議は10月28日18時から神保町RRR(東京都千代田区神田神保町2丁目7 芳賀書店本店ビル 5階)にて開催、主にCD音源を選定の予定です。未開封=未聴のCDがあっても、その場でバンバン開けて聴いてみたいと思いますので、お時間がありましたらご来場いただき、ご意見をいただけたらと思います。『野球レコードディスクガイド(タイトル未定)』は、来春刊行に向けて準備しております。乞うご期待!
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム クライマックスシリーズ2023」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/66258 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。