2023年のドラゴンズは、球団史上初となる2年連続最下位の屈辱を味わった。
今年も投打の歯車が噛み合わなかった。しかし、悲観的な要素ばかりではない。現役ドラフトでDeNAから移籍した細川成也は、和田一浩、森野将彦両打撃コーチ以来となる球団13年ぶりの日本人20号(結果は24本)に到達して主軸となった。同じ長距離砲の石川昂弥も不振や頭部死球を乗り越え、初の規定打席に到達している。
フルイニング出場で名実ともに一流選手の仲間入りを果たした岡林勇希は、今年もヒットを量産した。投手では、WBCで活躍した高橋宏斗が規定投球回に初めて乗り、リリーフでは50試合に登板した勝野昌慶も台頭。根尾昂だって先発として自信を深めた1年になったし、仲地礼亜という逸材の存在も将来に向けて頼もしいばかりだ。
竜のプロスペクトたちが順調な成長曲線を描く。そんな中、育成選手という「大穴」の前評判ながら、一軍で鮮烈な印象を残した有望株がいる。八戸学院大から22年の育成ドラフト1位で入団した松山晋也だ。
スイッチが入ると誰の言葉も耳に入らない
2月のキャンプから二軍で好投。ウエスタン・リーグの開幕直後からファームのクローザーを任されると、6月に支配下契約を勝ち取った。今季は36試合に登板し1勝1敗17ホールド。防御率は圧巻の1.27で、最終盤は勝ちパターンを任された。最速156キロのストレートと落差のあるフォークで、セ・リーグの打者を圧倒。何よりも、マウンドでの闘争心が最大の魅力であり長所だ。
ブルペンで大塚投手コーチから「松山、行くぞ」と声をかけられると、最後に1球を投げてからマウンドに向かうのだが、そこでスイッチがONになる。
裏の通路を通ってグラウンドへ向かう途中、燃え盛る闘争心で“モード”に入ると、誰の言葉も耳に入ってこなくなる。“冷静沈着”な選手とは対照的な、隠しきれない情熱の持ち主。やや昭和の匂い漂う剛腕だ。
私生活からも、なかなかの個性がにじみ出ている。昨年のドラフト前日に大学グラウンドのマウンドで布団を敷いて一晩明かしたことは有名になりつつあるが、実はヘアセットにもこだわりが強い。ライデル・マルティネスと同じ「バーバー」と呼ばれるクラシカルな理髪店でヘアセットする。大学時代の仲間に「コーム」と呼ばれるくしで丁寧に整髪されてからピッチングの調子が良くなったこともあり、名古屋市内のお店を検索してたどりついた。いまではすっかり馴染みの店だ。
見た目からお肉大好き派かと思いきや、青森出身だからか海鮮が好き。好きなお寿司のネタはイカ。渋すぎる。
筆者が記者時代、選手寮の前で待っていると2000錠入った「エビオス錠」(胃腸・栄養補給薬)とプロテインを持って目の前に現れた。「これすごくいいっす。体調悪くならないっす!」と教えてくれた。1日30錠ほど飲むらしい。何度か挑戦しようと思ってドラッグストアに行ったが、整腸剤も種類がたくさんあり、効能も様々……。どれにしようか悩んでいるうちに10月下旬になってしまった。2024年にチャレンジしたいことにリストアップしておこう。