8月9日、個性的な発刊書籍のラインナップから“反社会的社会派出版社”の異名を持つ東京キララ社内(この社屋は主に週末、DJイベントやトークライブ、フリーマーケットなどを開催するイベントスペース“神保町RRR”に変貌する、変幻自在の場所である)に、同社代表・中村保夫、同社編集スタッフ・有村タカシ、野球音源のみをひたすらかけまくるイベント「プロ野球 音の球宴(音球)」の名参謀・プロ空頭、そして“野球レコード収集家”こと私の4人が集まった。いよいよ動き出した『野球レコードディスクガイド(タイトル未定)』発刊に向けた第1回編集会議である。それまで中村さんとプロ空頭さん、私の3人がイベントなどで顔を揃えるたびに、「野球レコード本、出したいですねぇ」「出しましょう!」の問答を毎度繰り返すばかりで一向に前に進まぬ状態だったが、業を煮やした中村さんから編集会議開催の提案がなされての招集だ。
「野球レコード本なんだから、やはり野球にちなんだ数がいいね」
この日の会議では台割や判型など、頭の中でぼんやりと思い描いていた構成がいきなり具体化・明確化するという、まことに実りあるものとなった。特に盛り上がったのはメインとなる楽曲の掲載数決定の場面である。
「野球レコード本なんだから、やはり野球にちなんだ数がいいね」「ディスクガイドだからレコード好きの人にも手に取ってもらいたい。でも、中には野球をよく知らない人も多いはず。そういう人でもその数字を聞いて野球と結びつけられる、イメージしやすい数字ってなんだろう?」と鳩首する中、「そりゃあやっぱり」と中村さんが切り出したのは「756」。この数字はいうまでもなく、王貞治が1977年9月3日に達成した偉大なる記録、通算本塁打世界新記録756本を意味する。ちなみに中村さんは早稲田実業学校出身。王氏の後輩であり、我らがファイターズでいえば斎藤佑樹、清宮幸太郎の先輩だ。
「えーと、音球でアンセムとなる楽曲をメインとした、通称“一軍”を1ページあたり3曲掲載。それ以外の曲を1ページ6曲掲載するとして、“一軍”は50ページ150曲。それ以外を101ページに収めれば606曲、合計756曲! これだ!」「帯コピーには『野球レコード世界新記録、756曲掲載!』と入れましょう!」と、その場の全員が新記録達成の瞬間の張本勲のように飛び跳ねて歓喜し、756曲に決定。
9月18日、“一軍” 150曲を選定する第2回編集会議が行われた。前回の私の持ち帰り案件として自宅の所有盤から150曲選定する事となったのだが、家での一人作業にはやはり限界があり、どうにも行き詰まった。「だったらRRRで音球開催のテイでレコードかけながら決めませんか?」と持ち掛けられた。キララ社社屋兼RRRはDJ機材が完備されている。大量のレコード・CDを搬入し、私が普段の音球同様に選曲・プレイ→プレイした曲のジャケットを中村さん・有村さんがスキャン→スキャンした音盤データをプロ空頭さんがExcelにデータ入力、という連係作業となった。文字にしてみると何ともまどろっこしい作業に思えるが、意外と成果があり、この日のうちに150曲選定は無事終了した。
その中には『ぼくらのファイターズ』や『ファイターズ讃歌』、“ファイターズ歴代歌う監督”などなど、過去に私が文春ファイターズで取り上げた音盤たちも多数含んでいるのは言うまでもないが、これまで紹介していなかったファイターズ関連楽曲もこの機会に触れておきたい。