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 Xドットコムは、電子メールで送金できるシンプルで合理的なシステムを導入して急成長を遂げ、とくにオークションサイトのイーベイで人気となった。

 だが当初は「ポルノサイトまがいの名前では信用されない」と心配する声もあった。しかしマスクは、Xドットコムという名前を、以下の理由から気に入っていた。

・才気に走っていない
・シンプル
・覚えやすい
・入力しやすい
・@x.comという電子メールアドレスが使えて、めちゃめちゃクールである

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 それから現在に至るまで、マスクはXという文字をなにかにつけて使うようになったのだ。

 

・宇宙開発の会社として「スペースX」
・ツイッターの新しい社名として「X」
・一番新しい会社名として「X.AI」
・最愛の息子の愛称として「X」
(Xくんの母親であるグライムスによると、Xは「未知の変量」を意味しているとのこと)

「世界の金融システムを乗っ取りたいなら…」

 やがてXドットコムは、ペイパルというサービスを提供していた競合会社と合体することになる。マスクはXという名前を残したかった。「Xドットコムという名前は、まっとうな職場では口にできないいかがわしいサイトが連想される」と言われても、マスクは揺るがなかった。いまに至るも、である。

©時事通信社

「ニッチな決済システムになりたいのなら、ペイパルのほうがいいでしょう。でも、世界の金融システムを乗っ取りたいのなら、Xという名前のほうがいいのです」

 ツイッターあらためXに託したマスクの野望は、すでにこのときから始まっていたのだ。

イーロン・マスク 上

ウォルター・アイザックソン ,井口 耕二

文藝春秋

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イーロン・マスク 下

ウォルター・アイザックソン ,井口 耕二

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