自らを「紀州のドン・ファン」と称し、4000人もの女性と肉体関係をもったと豪語する野崎幸助氏。彼が自宅で不審な死を遂げる事件が発生してからすでに5年が経つ。妻の須藤早貴被告は殺人容疑で逮捕されたものの、いまだに裁判は行われておらず、真相は闇の中だ。
そんななか、野崎市のもとで30年もの間家政婦を務めた木下純代氏が、書籍『家政婦は見た! 紀州のドン・ファンと妻と7人のパパ活女子』(双葉社)を上梓した。ここでは、同書の一部を抜粋。長きにわたって紀州のドン・ファンを近くで見てきた女性はいったい何を思うのか――。
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毎日札束を女性にバラまき、20代の女の子とのセックスにひたすら明け暮れるあなたは、いつしか「紀州のドン・ファン」と呼ばれるようになりました。
3分に1回のペースで誰かに電話をかけ続け、ちょっとでも気に食わないことがあれば、瞬間湯沸かし器のように怒り狂う。気分屋で身勝手で傾奇者のあなたにトコトン付き合い切れる家政婦は、日本広しといえど私くらいしかいないでしょう。
理不尽に怒鳴られ、なじられたとき「このクソジジイ! あんたとはもうおしまいだ!」と堪忍袋の緒が切れたことは数え切れないほどあります。でもあなたには、ほかの男性にはないチャーミングでユニークな一面もありました。
豪快であけっぴろげで、自分がまわりからどう見られているのかなんて、一切、頓着しない。今この瞬間、自分がやりたいことに身を投じて完全燃焼する。そんな紀州のドン・ファンに仕え、あなたの人生に伴走できたことは、得がたく有意義な経験でした。
もうあなたに会い、言葉を交わすことはありません。ドン・ファンの勇姿は、私の心の中で永遠に生き続けています。どうか安らかにお休みください。
「ワシの遺産は全部イブちゃんに相続するからな!」
生前のドン・ファンは、ミニチュア・ダックスフントの愛犬イブちゃんをこよなく愛していました。
「ワシの遺産は全部イブちゃんに相続するからな!」
口ぐせのように、本気でそう繰り返していたものです。そのイブちゃんが2018年5月6日に急死し、まるであとを追うように、ドン・ファンは5月24日に突然亡くなりました。
ドン・ファンは今頃、天国でイブちゃんと楽しく戯れていることでしょう。天国では、人間もイヌも病気になって苦しむことなんてありません。愛おしいイブちゃんとともに、天国でいつまでも幸せに暮らしてほしいと心から願います。