昨年10月から、7年ぶりのガンダムシリーズのTVアニメ最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の放送が始まった。そのキーマンとして、観る者の心に強烈な印象を残したのは、主人公・スレッタの母であるプロスペラ・マーキュリー。
彼女は、母としての表情の裏に、目的のためには手段を選ばない冷徹さを隠した「しなやかなラスボス」だった。自身も母であり、プロスペラの声優を務める能登麻美子さんに、その難しい役にどう向き合ったのかを聞いた。
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ここまで物語の鍵になる役だとは思わなかった
――最初、プロスペラはどういう役と説明されましたか?
能登 オーディションの段階では、ここまで物語のキーになる役どころだとは思っていませんでした。
最初に前日譚「PROLOGUE」の収録があり、その前に監督とお話ししていた際に「エアリアルと一体化したエリィが幸せになるための世界をつくることが彼女の最終目標です」「そのためにはデリングとも手を組みます」と聞かされました。
――エルノラとプロスペラが同一人物であることは、最初からわかっていたんですね。
能登 実際にプロスペラが本編に登場するのは第2話からですが、エルノラとプロスペラは別人と思われてもいい、むしろそのほうがいいと受け取っていました。
無理に似せようとするよりは、歳月のなかであのように変化したと、自分のなかで整合性を取りながらやっていました。
サジ加減がズレたときはディレクションで修正
――かなり難しい役どころだったと思いますが、いかがでしたか?
能登 初登場時の「そちらが私に頼むのです」というセリフから、この人は笑顔で恐ろしいことをやっていく女性だな、と思っていました。「まずい、一筋縄ではいかない」って(笑)。
ちょっと誇張した演技のほうがいいのでしょうが、そのサジ加減がズレたときには、そのつどディレクションで修正していただきました。ですから、最初は「みんなでプロスペラをつくっていった」という印象が強かったです。なんとか毎回「とにかく必死で食らいついていく」感覚だったので、役を楽しむような境地には至りませんでしたね。