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自分の子供が、ある日突然犯人だと言われたら…

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

――作中の雪田さんは、ママ友の高見さんから、強い悪意を向けられ、「子供が事件の犯人だ」という根拠のない噂を広められます。けれど雪田さんは、怒らず、ほかの親に弁明もしません。そして、「幼稚園バスをやめて自転車登園に切り替える」という選択をして、渦中のコミュニティから距離を置く……という対応をとります。その達観した対応が印象的でした。弁明せず、対抗もせず。

ゆむい 高見さんは、幼稚園で雪田さん親子を悪者にしたウソの悪口を言いふらします。この行為は自分の子供を守るためなのですが、こういう高見さんの「ちょっとした攻撃」ぐらいの出来事は、現実でも珍しくないと思います。

悪人はいないのにこじれてしまう日常

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

――正面切って対抗するか、弁明するか、距離を置くか…。社宅×幼稚園という子供がベースにある密な人間関係だからこそ、子供に険悪なムードを悟らせないように配慮したり、冷静さ、努力もあるのかもしれませんね。作品を読んだときの受け取り方も読者によってさまざまな反響がありそうです。

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ゆむい この作品の登場人物は、みんな母であり一人の親なので、「本当の悪人」はいないんです。全員、自分の子供を守ろうとしての行動だというのを意識しました。でもだからこそ、そのせいで、どんどんこじれてしまう。ひとつひとつのセリフは自分の中から出た言葉じゃなくて、受け取った言葉や聞いた言葉を吹き出しに書いてます。日常の雑談や愚痴から、本音がポロっと出てくることもあります。

 日常のちょっとしたことが、人間関係を崩してしまう、ということは、親ならずともよくあること。当事者達のそれぞれの視点によって、「正義」「真実」が変化する様子がとてもリアルに描かれている本作、人間関係はどうなるのか、そして一体、だれが犯人だったのか、ミステリーの結末はぜひ単行本で確認してください。