仲良しだった社宅のママ友が、ある事件をきっかけにぎくしゃくしていく…10/4に発売されたコミックエッセイ『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』(KADOKAWA)の舞台は「社宅」。お互い知らない人なのに、隣人であり、会社の同僚としてもつながっている、どこか不思議な世界です。
シリーズ25万部超え(紙+電子)の大ヒット漫画『夫の扶養からぬけだしたい』以来、久々の描きおろし作品を手掛けた、著者・ゆむいさんに作品について伺いました。
◆◆◆
会社から、プライベート情報が筒抜け?
―― ある日仲良しママ友の子供たちが高級外車を傷つけた。目撃者は子供だけ。誰が犯人なの? と疑心暗鬼に陥り、母親たちの人間関係が少しずつ変化いていきます。自分の子供が、突然犯人だと言われたら……親なら誰しもがドキッとしてしまう展開です。本作の舞台は社宅。社宅の人間関係はですが、いつの間にか夫の学歴をママ友に知られていたりなど、印象的なシーン、人間関係が描かれます。
ゆむい 実は、私自身が結婚してからずっと、夫の仕事の都合で社宅に住んでいたんです。
社宅だと、子供同士でトラブルがあったけど、「あの人、うちの旦那の上司だから強く言えない」という話も聞いたりします。でも、地震の時などの緊急事態に、配偶者がなかなか帰ってこれないときには、残された人たちが「ガスはこうやって開けるんだよ」と助け合っていたりもします。そんな社宅の良い面、悪い面を、いつか描いてみたいなと思っていました。
――最近都会の隣人関係は希薄になっていると思いますが、そういった濃い人間関係が残っているんですね
ゆむい はい。そうなんです。それに、社宅だから、みんな「いつか引っ越す」前提はわかりきっているんです。実際、半年しかいなかったり、すぐに出て行ってしまう人もいます。そういう人のために小学校の情報を教えてくれたり、幼稚園の制服をわざわざ取っておくコミュニティがあったりします。そういう助け合いの精神はとてもありがたいですよね。
社宅って、身元が分かっている安心感があるので、最初は良かったと思っていました。でも、住んでみると思った以上にいろいろあるなと。その人間関係をベースにミステリーに仕上げました。
真実はどこに? どうしてウソをついたのか?
――「ママ友の世界ってホラーなのか?」とも……。初のミステリー調の作品ですが、ミステリーに仕上げるうえで、物語の構成で意識されたことはありますか?
ゆむい 実は母親だから、ママ友だから、というので意識したことはありません。私の作品で共通する部分でもあるのですが、構成では、人の思い込み、すれ違いを意識しました。登場人物みんなが憶測で話してるとか、噂だと、「ウソの話」も本当っぽく広がってしまうとか、現実でも実際に起こりうることだと思います。
そういう小さな出来事を積み重ねるうちに、時間とともに話がどんどんこじれていく過程を、全体の中で描いています。すごく難しくて、構成には時間がかかりましたね。話の順番を入れ替えてみたりなど、様々なことにトライしてみた作品です。