ササポンさんがふと思いついた「シェアハウス」
――そもそも、ササポンさんがシェアハウスをはじめられたのはいつ頃なのでしょうか。
ササポン 2003年くらいからです。もともとは夫婦で暮らしていたんですが、離婚をしまして。ひとりで3LDKは持て余していたので、最初は一軒まるごと貸し出して、自分は近所に1LDKでも借りようかと思っていたんです。でも賃貸物件の家賃相場を調べたらなかなか高いので、そうすると自宅を貸して家を出るのがもったいないなぁと。いっそこのまま住みながら貸せないものかなと考えていたときに、ふと思いついたのがシェアハウスなんです。
いちばん最初に入居した人は、近くに彼氏が住んでいたけど、その彼の家がワンルームで狭いから、という理由だった。はじめに女の子が入居していたから、そのあとも女性が入りやすかったんじゃないかな。
――自宅に他人が生活している、という環境に抵抗はありませんでしたか?
ササポン 私が小さい頃、実家が間貸しをしていたんですよね。間貸ししていたお宅のお子さんに遊んでもらったとか、そういう経験もあるので、慣れているというか、あまり抵抗はなかったです。
――シェアハウスを希望した当時のお姉さんの心境は?
姉 その当時は編集プロダクションで記者をやっていたんですけど、20代の半ばで仕事やプライベートに色々悩んでいて……。うーん、今考えると、私もアキ(亜希子さん)と同じように、“詰んでいた”時期だったのかもしれません。
大木 あの時、お酒大好きだったよね。飲み過ぎて心配になるくらい。だから、傍目に見ていても、ササポンのところに行ってからの姉は精神が安定して、そこから夢に向かって前進していったという印象がありました。
――シェアハウスをすると精神的に安定するというのは、具体的にどのような面に現れましたか?
ササポン 他人と暮らすようになると、自分を律するようになりますね。僕自身もシェアハウスを始める前は、洗濯したものを畳まずにソファーにかけておいて、ソファーがクローゼットのようになってしまったり、風呂あがりにパンツ一丁で歩き回ったりしていましたから(笑)。他人の目があると1人で暮らすよりも、丁寧に生活ができるなと思いました。
大木 でもササポン、しばらくシェアハウスをやめていたんですよね?
ササポン そうだね、2010年頃にはやめていた。その頃になると、世間的にもシェアハウスという概念が浸透してきて、「夢を追う」というよりは「安く住みたい」という理由の人が増えてきたんだよ。不動産屋さんでもシェアを目的に賃貸することもできるようになってきたから、もうやめてもいいかな、って。ちょうど1階の部屋に住んでいた男の子が海外に行くことが決まったから、そのタイミングで、他の入居者には申し訳なかったけど、「やめます」と。