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見守ってくれる人が増えはじめた

姉 家族のグループLINEで、毎日アキと連絡を取るようにしていました。アキのダイエットを応援するという名目でその日に食べたものを送ってもらっていたんですが、体も心も心配でしたから、とにかく元気な様子が知りたかった。母とは「絶対にアキのことを否定するのはやめようね」と話していました。

©橋本篤/文藝春秋

大木 家族には本当にサポートしてもらいました。それから都内某所の倉庫で梱包のバイトを始めると、本にも登場するヒカリとケイコという友達もできて、それにササポンもいて。そうやって見守ってくれる人たちが増えはじめてからは、精神的にもだんだん安定してきて、体重もちょっとずつ減りはじめました。

「私! 痩せましたよね!」「あ、そう? わかんない」

姉 でもさ、ササポンはアキの見た目に対して何にも言わないの。

ササポン うん。

 だから、そういうことに気づかない人だと思っていて、あるとき「ササポンってアキがあんなにむくんだり、ぽっちゃりしたりしてるのに、気づかないんだ」みたいなこと言ったら、「え、気づいてるよ」って。思っていても言わなかったのが「さすがだな」って。

大木 私が体力作りやダイエットを頑張って、リビングでマットを敷いてヨガをはじめても、ササポンは隣で山芋の漬物を食べながらテレビで『相棒』とか観ているだけなんです。で、私は運動してハイになっているから「私! 痩せましたよね!」とか言うんだけど、「あ、そう? わかんない」って(笑)。

ササポン でも痩せたときは「ちょっと痩せたね」って言ったよ。

大木 あんまり言わないから、心が乱されずに済んだ、という部分はありました。

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©橋本篤/文藝春秋

 友達と飲んで、朝帰りしても何も言わなかったよね。「何日も空ける場合は事前に教えてね。さすがに心配するから」って。ほんと、決まりごとといえばそれくらい。ゆるかった。

大木 私は2階の共有スペースであるリビングのダイニングテーブルで原稿書いていたんですけど、なかなか進まなくて、髪をかきむしって発狂していたときも、ササポンはまったく意に介さずにヘッドホンを取り出して、電子ピアノでクラシックを奏で始めるんです。

当時同居していた家の、実際の間取り。2階にはリビング、3階にササポンさんの部屋が ©橋本篤/文藝春秋
大木さんの部屋は1階に ©橋本篤/文藝春秋

ササポン あまりいろいろなことに干渉しちゃいけないかな、って気がしていたので。

――それは元からの性格ですか? それともシェアハウスを運営するなかで身につけた感覚でしょうか?

ササポン もともと人に干渉するタイプではないですね。

大木 でもササポンにもいろいろな時代があったんですよね。昔はバスケットボールのコーチをしていて、結構厳しい熱血コーチだったから、ちょっと後悔している、みたいなこと言っていませんでした?

ササポン 大学時代に高校生の指導をしていてね。そのときは、厳しかったので、ええ。

 やっぱりコーチをやるぐらいだから、ササポンは人を育てることができるっていうか。面倒見がいいんだよね。