「本になって、映画にもなって」不思議な縁でつながった
姉 私、ササポンにずっと聞きたかったことがあるの。アキはササポンと一緒に住んで変わっていったけど、ササポン自身は何か変わったのかな? なんかササポンはずっと淡々としているし、ひとりでも平気なわけでしょ?
ササポン アキちゃんと暮らすことで新しい媒体とか、新しい世界とか、新しい価値とか、そういうものに触れられてよかったと思う。同じ世代の人とか、会社の人だけだとね、わからない世界ってあるじゃない。
姉 でもさ、運命だよね。ササポンはもうシェアハウスをやめていたのに、最後にアキが入居して、こういう形でシェアハウスが終わったのって。
ササポン 家を出たあとも交流があったのはお姉さんだけだし、その紹介で入ってきた妹さんが最後の同居人で、その人が作家になって、本になって、映画にもなって。不思議な縁だなと思います。
大木 ササポンとしては、井浦新さんのような素敵な俳優さんがご本人の役を演じられることについて、どう思っているんですか?
ササポン 僕にとっても人生のギャグですよ。こうなると思わなかったもんね。
深川さんにしか演じられない「安希子」という役柄
――最後に、映画の感想をお聞かせください。
大木 私の役を、同じく元アイドルの深川麻衣さんが演じてくださるということで、最初は同じ背景を持った俳優さんだからこそ、リアルに共感しながら演じてくださるだろうと思っていました。でも、実際に完成した映画を観て、その予想は良い意味で裏切られましたね。
彼女は元アイドルだからではなくて、まぎれもなくひとりの俳優として見事に「安希子」という役柄を演じてくださって……。感激しました。この作品を多くの方に観てもらうことで、人生に焦ったり悩んだりしても大丈夫だと思ってもらえたら嬉しいし、「色々あるけど明日も生きてみっか」とか、「小休止したら、また頑張ろうかな」と少しでも感じてもらえたら最高ですね。
姉 私は、家が実際のササポン邸の雰囲気そのままで、びっくりしました。もちろん全く同じではありませんけど、観ているうちに当時の記憶が蘇ってきて、懐かしいなと思いましたね。あとは、そうだなぁ……、井浦新さんが普段は色気がムンムンなのに、その色気を消していてすごいなー、と。ササポンよりだいぶいい(笑)。
ササポン 見てくれは違うけど(笑)、ただ雰囲気は近い感じかなって思いました。
大木 似てた。あと、井浦さんが劇中で穿いてたステテコ、実は、監督の意向で特注なんです。衣装さんが、撮影初日までに使い古された感じが出るよう加工したそうです。
ササポン 家ではあんな感じだったもんね。
姉 あとは深川さんの服装とか雰囲気が、当時のアキにそっくりだなと思いました。映画に出てくる「安希子」みたいな子は、世の中にいっぱいいると思うんです。私も30歳前後の頃に重なる部分があったなぁ、と思って観ていました。そういう方に共感してもらいたいですね。
大木 ササポンはどうですか?
ササポン うーん、小説を読んで、その後マンガを読んで、映画の試写を観ましたけども、映画には伝えたい内容が結構凝縮されているな、と思いました。本やマンガでは想像したり、マンガ的な表現で見てたけども、やっぱり映像で見ると、アキちゃんがもがいている姿とか、自分が見えてなかった、見てなかったところがより伝わってくる。そういう印象を持ちました。
大木 小説とはまた違った形で知ってもらえるきっかけになるので、映画を通じてこの作品を楽しんでもらえたらな、と思います。
取材・構成 加山竜司