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「できなかったことができるようになった」「新しい知識や学びを得てさらに飛躍できる気がする」「今までと違うことを試してみたら上手くいきそう」そんな記憶を睡眠は長期記憶として保存してくれます。

 脳の海馬には、風景、音、触った感覚、匂い、振動、体内の感覚、すれ違った人の姿まで、1日のうちに取り込んだあらゆる情報が一時保存されています。海馬での記憶が何度も再生されると、脳内のハードディスクにあたる新皮質のニューロンのネットワークに長期記憶として保存されると考えられています。

 ドイツ・リューベック大学のディーケルマン氏らは「睡眠後わずか数分で海馬から新皮質への新情報の移動が始まり、40分の睡眠後には新たな記憶に妨害されない長期保存の領域に、十分な量の記憶が保管された」と報告しています。新しく学んだり、技術を修得したりした後は「長期保存させるために睡眠をとる」これはパフォーマンス向上にとって効果的な方法です。

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アイディアが浮かぶ

「いいところまできてるんだけどな……」「何かが足りない、その何かがわからない……」「もっとよい表現や戦術はないだろうか?」何かを真摯に追求している人たちが必ずぶつかる壁です。しかしそういう時に頼もしい味方になってくれるのも睡眠です。

 スペインの画家・ダリは自身の名作について「夢の中で見た光景を絵にかいた」と語っています。ドイツの化学者・ケクレはヘビが出てくる夢を見て6つの炭素が環状に並ぶベンゼン環の構造を思いつきました。世界的音楽家、ポール・マッカートニーはバンドを代表する曲のひとつ「イエスタデイ」のメロディーを夢から覚めたときに思いついたそうです。

ポール・マッカートニー ©getty

 当時弱冠22歳のラリー・ペイジはウェブに関する夢を見て、グーグルの検索エンジンの原型となるアルゴリズムを開発しています。睡眠中には、覚醒時には抑制されていた記憶と記憶がランダムに結合する可能性があり、睡眠は新しいアイディアや閃きにつながると考えられています。「あとは夢にまかせた」は案外、ベストに近いのかもしれません。