「庭でたき火をした。炎の中で大好きだった南沙織の赤いビキニのグラビアが燃えていく。燃え残った黒い灰を見て、これは僕を誘惑する悪魔の仕業だからこんなに真っ黒で木の棒でつつくとむなしく崩れる燃え殻になったのかな? なんて無理矢理考えた」
「あぁ、まだ抜けていなかったんだ」
エホバの証人の信者だった母と、連れられるように入信した宗教2世の関口さんとのやり取りからは、ことさらに性に厳しい戒律に対する葛藤と、母への屈折した愛が伝わってくる。
この時の心情を関口さんは、「あぁ、(宗教が)抜けてなかったんだって改めて思った」「死のうと思った時に、最期に出てきたのが、宗教の思い出だった。そこまで潜在的に宗教が自分の中に根付いているとは思わなかった」と語っている。
すでにエホバの証人から脱会して二十数年たっていた。そこまで、人間の奥底に入り込む宗教とは何なのか。
父の病死で弱る母につけ込んだエホバの証人
関口さんは、母親がエホバの証人に入信したのをきっかけに自身も入信した宗教2世だ。母親が変わっていくのを目の当たりにしながら、葛藤し、自分自身は宗教を拒み、20歳の時に排斥(エホバの証人から排除、追放されること)されるに至る。
母親の入信のきっかけは、父親の病死だった。
「父が、僕が小学校1年生の入学式の時に結核で死んだんですけども、その後2年くらいたって、母が相変わらず憔悴(しょうすい)しきっているところに、エホバの人が、家庭訪問に来て。それで持っていかれたという感じです。頻繁に教会に通うようになって。父の死を知って来たのかはわからないですけど、知っていたのならつけ込まれましたね」
関口さんも教会や訪問販売に連れて行かれるようになり、やがて入信。しかし、心は徐々に離れていくことになる。
デクレッシェンドのように信仰心が引いていった
「音楽で言う、デクレッシェンド――徐々に離れていったという感じなんですけど、それまでは完全に洗脳されていましたね。反抗期までは、かなり忠実に一生懸命母親と集会に通っていました。将来、アルマゲドンが来るとか、死んだ人が復活するとか本気で信じていましたし」