新卒入社の生え抜き40代が“本命”に躍り出た瞬間だった。
「ユニクロ」や「ジーユー」ブランドを展開するファーストリテイリング(以下、ファストリ)。来期(2024年8月期)の売上収益3兆円を見込み、世界の主なアパレル企業では、スペインのZARAやスウェーデンのH&Mに次ぐ、第3位に付けている小売業界の雄である。
同社は今年8月28日、連結子会社のユニクロの人事異動を発表。グローバルCEO(最高経営責任者)を務める取締役の塚越大介氏(44)が、9月1日付で代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任すると明らかにしたのだ。ファストリで会長兼社長CEOを務め、ユニクロでは代表取締役会長兼社長だった柳井正氏(74)は、ユニクロの会長兼CEOとなる。
同社によると、柳井氏は今後もユニクロで「経営の意思決定および事業拡大をリード」。ファストリでも「これまでと同様にグループ全体の経営の意思決定ならびに経営執行を担って」いくという。
ただ、今回の人事は「次世代のチーム経営体制強化の一環」であると、説明している。つまり塚越氏の社長就任は、資産額5兆円(フォーブス調べ)とも言われる創業家のカリスマ・柳井氏の“次”を、明確に意識した人事なのである。
2005年にファストリが持ち株会社体制に移行した際、事業会社として誕生したユニクロ。発足19年目にして、初の社長交代となった。
「ユニクロUSA」CEOとして頭角
では、塚越氏とはいかなる人物なのだろうか。
塚越氏は武蔵工業大学(現・東京都市大学)の出身だ。大学では環境問題を専攻していた。
「塚越氏が就活をしていたのは、ちょうどフリース旋風が一段落した頃でした。会社説明会で熱く語る柳井氏を見て、ファストリに入ろうと思ったそうです」(経済ジャーナリスト)
2002年に新卒で入社後は、他の社員同様、国内の店舗の店長を務める。スピード出世を遂げ、FR―MICと呼ばれる社内教育部署の部長も務めた。
「FR―MICは、柳井社長の考えの下で生まれた部署。次世代の経営者人材の育成を、経営トップと直結で行う重要なセクションです」(ユニクロ社員)
順調に出世を重ねていき、2015年にはファストリのグループ執行役員、2019年には上席執行役員に就任している。