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ちまたではクマの話題で持ちきりだ。いまや玄関から一歩外へ出るにもクマがいないか警戒しなければならず、かつてない異常事態に直面している。佐竹敬久知事は10月16日に記者会見で「いつでも、どこでも、誰でもクマに遭遇するリスクがある」と警鐘を鳴らしたものの、クマに襲われて負傷する事故は後を絶たず、騒動は当分収まりそうにない。

秋田県によると、県内で発生したクマによる人身被害は10月19日現在、45件52人に上り、記録の残る年度以降で最多を更新し続けている。一昨年の12件12人、昨年の6件6人と比べると、いかに急増したかが分かる。

クマの目撃件数が2000を超えたが実際はもっと多い

秋田県警に寄せられたクマの目撃件数は、今月15日時点で2144件となり、記録の残る2009年以降で初めて2000件を超えた。これでも一部に過ぎない。なぜなら山間部ではクマを見ない日がないほど頻繁に出没するため、多くの地域住民が見慣れてしまい、警察に通報しなくなっているからだ。秋田魁新報の社会面は連日、クマによる人身被害や食害などに関する記事や写真であふれ、多くのスペースを割かざるを得なくなっている。時には丸々1ページが埋まったり、1面トップに据えたりすることだってある。

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秋田県内には2020年春時点で4400頭のクマがいると推定されている。本来は山林を生息域とするため、従来はキノコ採りや山菜採りで山に入った人が襲われるケースが多かった。ところがここ数年で状況は一変した。クマの方から人間の暮らすエリアに侵入し、鉢合わせした人を襲うようになったのだ。実際、今年の人身被害の8~9割は山中ではなく人間の生活圏で起きている。

県都・秋田市の住宅密集地にもクマが現れ、市民は震撼

中でも衝撃的だったのは、今月9日に県都の秋田市で発生した事故だ。住宅密集地にクマが現れ、立て続けに4人に飛びかかったのだ。現場は県庁からわずか3キロ。日本海と雄物川と運河に囲まれた島のような地形の中にあり、クマが入り込むには橋を渡るか、川や運河を泳いでくるしかない。地域住民の誰もが「まさかこんな場所で……」と耳を疑い、「クマが出たという情報自体、初めて聞いた」と口をそろえた。