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 那覇市の飲食店経営者からは、こんな話を聞いた。

「内地からの旅行者に、大麻が好きな人が多いのも、原因のひとつだと思います。夜が深くなると、一定数の若者から“大麻買えるところってありませんか?”と聞かれることも増えました。クラブとかで遊んでいると、もっと聞かれるみたいです」

 そんなわけで、大麻を扱うのは主に若者だ。若者は販売に、SNSを利用する。高齢化しているヤクザが中心になって販売しているケースは、ほとんどない。かといって、売人はヤクザにみかじめ料を払っているわけでもないようだ。SNSの匿名性もあって、ヤクザとつながらなくても商売ができるのだろう。

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 こんな状況を、ヤクザが指をくわえて見ているわけがない。近年はヤクザがお客を装い“売人たたき”をして、事件化するケースも見られるようになった。

 やり方はこうだ。まず、SNSで若い売人に連絡をとり、待ち合わせをする。売人が待ち合わせ場所に着くと、4、5人の組員とお目見えすることになる。若者はそのまま車に連れられて軟禁され、ありがたいお説教を喰らう。これがだいたいのパターンだ。軟禁後、売人が警察署に放り投げられる事例もあった。そんないざこざが起こるほど、大麻の需要が拡大しているということなのだろう。

親友の子どもも大麻の餌食に

 私には、かつて親友がいた。親友はとある事情で亡くなったが、彼には一人息子のSがいた。不憫に思った私は、事あるごとに、Sの面倒をみていた。お世辞にも、素行がいいとはいえない。特殊詐欺に関わっていたこともある。だが、詐欺グループから離れることに協力すると、Sは警察に自首した。ちょっとグレたところはあったが、Sも自分を変えようと努力していた。もう悪いことに手を出しはしないだろうと、私も安心するようになっていた。

 だがある日、Sからこんな電話がかかってきた。

「神里さん、大麻って手に入らないですか?」

 正直にいえばショックを受けた。こんなにも身近にまで大麻が広がっているとは。しかもSの口ぶりから、今回が初めてではなく、常習的に違法薬物に手を出しているようだった。