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 物語の中で描かれるたくさんの〈それでも〉は、フィクションだし、時には綺麗事だし、どれだけ頑張っても現実はその通りにならないことばかりだ。
 それでも、物語の中の〈それでも〉が現実を生きるための浮き輪になる瞬間がある。溺れそうな自分の前に突然現れて、息をするのを助けてくれる。

 事実、私もたくさんの浮き輪に助けられて大人になったので、〈それでも〉を描いた小説を読むと、学校の図書館に並んでくれと心から思う。
 どれだけの名作が所蔵されていようとも、慌ただしく移り変わっていく時代の中にはその瞬間その瞬間の〈それでも〉があり、それが読む人の背中を少し押すのだ。

 都合よく救ってはくれなくても、明日もちゃんと起きて学校へ行こうと思うくらいに。この本を図書館に置く学校なら、もう少しだけ信じてみようと思うくらいに。
『宙わたる教室』もまた、そういう1冊に違いない。