『カムカム』『まんぷく』の場合
さらに振り返ってみると、『カムカムエヴリバディ』(2021年後期)の安子(上白石萌音)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)からは「そんなぁ~!」を聞いた覚えがない。『舞いあがれ!』(2022年後期)の舞(福原遥)も「航空学校編」ではややおせっかいに“キャラ変”したが、辛うじて言っていなかった気がする。『らんまん』の寿恵子は前述のとおり。そしてもちろん『ブギウギ』のスズ子からも聞いていない。
現在、朝7時15分からBSプレミアムで再放送中の『まんぷく』(2018年後期)の福子(安藤サクラ)は一度だけ「そんな……」と言っていた。しかしこれは「おせっかい発動時」ではなく、将来の夫・萬平(長谷川博己)が冤罪で憲兵に捕らえられたときに発した、「理不尽すぎる」という意味での「そんな」だったので例外とする。
「コミュニケーションの変化」というのも、重要なキーワードと言えそうだ。一昔前の朝ドラヒロインは、何にでも体当たりでぶつかって、人間関係の中で「おしくらまんじゅう」をしながら揉まれて学び、成長していった。対して近年の朝ドラヒロインは、距離感を大事にする。こんなところにも時代性を感じる。
時代ごとに異なるヒロイン像
朝ドラのヒロインが謎の“万能感”を発揮して、「どうにもならないこと」をどうにかしてしまう。そんな時代が、かつてあった。しかし最近の朝ドラは、「どうにもならないこと」は、「どうにもならないこと」として、ありのまま描く傾向にある。「どうにもならない」、ならば「どうするか」。現代を生きる視聴者には、そんな作劇がフィットしているのかもしれない。
最後に、本稿において「そんなぁ~!」型ヒロインを否定する意図はないと明記しておきたい。時代ごとに求められるヒロイン像がそれぞれ異なる、ということだ。何事においても、歴史の積み重ねの先に、今日がある。
はたして、最新の朝ドラヒロイン・スズ子はこれから、どんな人間関係を構築し、どんな人生を歩むのだろうか。