10月19日、福岡県久留米市のマンションで、腐敗が進んだ女性の遺体が見つかった事件。亡くなっていたのは、市内で公立小学校教師を務める渡邉彩さん(当時35)だった。

 翌20日、福岡県警は、部屋にいた夫の渡邉司容疑者(41)を死体遺棄容疑で逮捕した。2人の幼い子供を実家に預け、朽ちていく妻の亡骸と約1カ月を過ごしていた夫の狂気。夫婦間に何が起きていたのか――。その真相が「週刊文春」の取材で浮かび上がってきた。

亡くなった渡邉彩さん(卒業アルバムより)

校長が自宅を訪問するも応答が無かった

「妻の体調がすぐれない。数日間休ませてほしい」

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 司容疑者が彩さんの勤める小学校に連絡をしたのは、9月21日のこと。だが、気さくで優しい先生として知られた彩さんが、学校に復帰することは二度となかった。

「10月19日、連絡の取れない彩さんを案じた弟が自宅マンションを訪ね、室内に横たわっていた彩さんの遺体を発見。110番通報したことで事件は発覚しています。この間、小学校側が週2、3回のペースで司容疑者に連絡をしていましたが、彼は『まだ体調がすぐれない』『急な病気だから』などと嘘をつき、直接彩さんと連絡を取らせることを拒否。校長が3度、自宅を訪問していますが応答はなく、誰とも会えませんでした」(社会部記者)

司容疑者

5000万円の新築マンションの購入を決めていた

 約10年前、久留米市内のデザイナーズマンション最上階に移り住み、やがて2人の子宝に恵まれた渡邉夫婦。過去には夫婦喧嘩で警察を呼ぶこともあったが、2人はこの夏、さらなる幸せに向け、大きな決断をしていた。

「市内にできる新築マンションの購入を決めたんです。約5000万円の4LDKタイプの部屋と聞いています。積極的だったのは彩さんの方で、新たな生活空間を手に入れられることに、とても嬉しそうでした。大きな買い物だからか、夫の司さんは最後まで慎重だったようです」(夫婦の知人)

 司は福岡県内にある小さなIT企業の役員。公立小学校教師の彩さんより年収は低かったものの、司が自己資金から2000万円強の頭金など初期費用を支払い、残額分は夫婦がローンを組むことで、マンション購入の話はまとまった。

 司容疑者が分担する頭金の支払い期日は9月15日。ところが――約束のその日、入金が実行されることはなかった。