親の願い通りにならないのが子育て。それでも、二刀流の大谷翔平選手(29)や将棋の藤井聡太八冠(21)のような人間に育ってくれたら、この上もない喜びだろう。本稿では、藤井八冠自身が語った名言をもとにどのような家庭環境で育ったかの一端を紹介しよう――。
※本稿は、桑原晃弥『藤井聡太の名言』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
紙の新聞・辞書、司馬遼太郎、沢木耕太郎を読む小学生
藤井聡太の名言
毎日、新聞に目を通しています。自分の目に見えるものだけだと、どうしても狭い世界になってしまうので、新聞を読むというのは、長年続いている習慣です。
(『考えて、考えて、考える』丹羽宇一郎・藤井聡太著、講談社)
プロ棋士となった藤井聡太が連勝を続け、インタビューを受ける機会が増えるにつれ、注目されたことの一つが「豊富な語彙(ごい)力」でした。
11連勝した際には「望外の結果」と語り、20連勝の際には「自分の実力からすると僥倖(ぎょうこう)としか言いようがない」と語って記者たちを驚かせています。
通算50勝を達成した際には、「一局一局指してきたのが、節目(せつもく)の数字となりました」と、「ふしめ」ではなく「せつもく」という言い方をしています。「ふしめ」が人生や物事の大きな区切りを意味するのに対し、棋士として長く戦い続ける藤井にとって50勝は区切りというよりは通過点ということで、あえて「せつもく」という言い方をしたのでしょう。
こうした言葉を中学生の藤井が使いこなすことに世間は驚き感心します。藤井に語彙力をもたらしたのは子ども時代からの読書や新聞でした。好きな作家は司馬遼太郎やノンフィクション作家の沢木耕太郎なども好んでおり、『竜馬がゆく』や『深夜特急』を小学生の頃に読んでいたというから驚きです。
本に関しては「一度本を開いたら最後まで読んでしまうことのほうが多かった。読み終えてみたら、思ったより時間が経っているみたいなことはよくありました」とここでも将棋と同様の圧倒的な集中力を発揮しています。