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笠置シヅ子の実母は母親であることを認めなかった…17歳で自分が養子と知った昭和のスターの壮絶な生い立ち

source : 提携メディア

genre : エンタメ, 芸能, 昭和史, テレビ・ラジオ

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宴会の場でとつぜん自分が養女だったと知らされ…

彼女が少女歌劇の舞台に立っていることは地元でも知られている。つまり、親戚筋の有名人を法事に出席させて、没落した名家の面目を保つということか。と考えて、一応は納得していたが、すぐに自分がここに呼ばれた本当の理由を知ることになる。法事の同席者たちから求められて、レビューの踊りや歌を披露した。みんな大盛りあがりして喜ぶ。しかし、酒が入って口が軽くなっていたようで、

「見事なもんやなぁ、あの時の赤ん坊が立派になって」
「陳平が生きとったら、きっとこの娘を家に呼び戻していただろうになぁ」

などと、言ってはならない事をしゃべる者がでてくる。うめは伯父に出席者たちの口止めを徹底するよう言い含めていたが無駄だった。不審に思った静子は、法事を終えてから従姉妹や伯母を激しく問い詰めた。その勢いに気圧(けお)された伯母が出生の秘密をしゃべってしまう。

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母も父も弟も、家族がみんな自分と血の繫(つな)がらない他人だったとは……これまで信じてきたものがすべて崩れ落ちたような、言葉にできない衝撃をうけた。

大阪の父母とは血がつながっていないという衝撃

事実を知った日の夜は一睡もできなかった。朦朧(もうろう)としながら朝を迎えて、ふらふらと家を出てあてもなく街をさまよい歩いた。そして町外れの川に辿(たど)り着き、衝動的に川に入ってしまう。肩まで水に浸かり、川から上がった時には髪も着物もずぶ濡れ。その姿で河畔の土手を走りまわったというから、誰かに見られていたら大騒ぎになっただろう。いったい何がやりたかったのか、自分でもわからない。尋常な心理状態でなかったことは間違いない。

静子は感情の起伏が激しく、突拍子もない行動にでることが時々ある。反面、切り替えの早いサバサバ系。後悔や未練をいつまでも引きずらない。悩んでいるよりは、悩みの原因を解決するために動こうとする。この時もそうだった。

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