いま、中国のIT業界は深刻な不況に陥っているという。中国人プログラマーとIT業界を巡る3つのトピックについて、中国やアジア地域のITやトレンドに詳しいライターの山谷剛史氏が解説する。

◆◆◆

IT業界はリストラの嵐、「35歳プログラマー引退説」が現実に

 まず最初の話題は、中国のIT業界の不況について。先日、中国版のTikTok「抖音(ドウイン)」で、IT業界のリストラによって解雇された40代の中国人男性の自撮り動画が話題になっていました。動画では、男性がこんなことを話しながら号泣していたのです。

ADVERTISEMENT

「私は1982年生まれの41歳で、C言語のプログラマーです。リストラされたあと、1年間で何百通も履歴書を出したのに、全く採用されませんでした。『41歳は年齢が高すぎる』『C言語は要らない』と言われてしまいます。今、ネット企業はリストラの嵐で……なんでこんなことになってしまったのでしょうか」

 中国には、テンセント、アリババ、バイトダンス、ファーウェイなど、さまざまな有名IT企業があります。各社は、ChatGPTなどの生成AI登場に対して遅れをとらないよう、生成AIサービスの開発に取り組み、製品をリリースしていますが、AI人材が不足しているのが現状です。

写真はイメージです ©iStock.com

 一方で、中国では「35歳プログラマー引退説」があり、マネージャークラスでない限り、35歳以上はいつリストラの対象になってもおかしくないと言われています。特にこの1、2年は、不景気によって、過去10年で最もリストラが相次いでいるそうです。

 プログラマーに限らず、中国で35歳という年齢は、大きな節目と捉えられています。たとえば、中国の大半の公務員の採用年齢は、35歳までに制限されています。中国社会全体が、35歳以上の新規雇用に消極的という風潮があるのです。

 冒頭で紹介した40代の中国人男性に話を戻すと、たとえニーズのあるプログラミング言語を勉強していても、彼が再就職するのは、日本以上にハードルが高いと思います。

 中国のSNSで、「日本では、年収40万元(日本円で約830万円)でプログラマーとして働ける」という話題が出たとき、現地の人々から「日本で働きたい!」という声が多く上がりました。中国の有名IT企業のエンジニアの給料は、日本人から見ても羨ましいほどの額です。ただ、そこで働き続けられるのは、ほんのひと握り。そのほかの多くの中国人エンジニアにとっては、日本でエンジニアとして生きる道も、選択肢に入ってくるのではないでしょうか。