2021年4月28日に公表された厚生労働省の調査結果によれば、全国のホームレスの内訳は、男性3510人、女性197人、性別不明117人……女性ホームレスはなぜ男性よりも少ないのか?
取材のために2021年7月23日~9月23日までの約2ヶ月間をホームレスとして過ごした國友氏の新刊『ルポ路上生活』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「そんなところに住むのは怖いじゃない」
日中は小田急第一生命ビルの吹き抜けで過ごし、夜は新宿駅西口地下広場で寝泊まりしている50代くらいの女性も、つい最近まで生活保護を受けながらアパートで暮らしていたが、自分から打ち切り、ホームレスになったという。現在、収入はなく、私たちと同じように炊き出しに与りながら生活をしている。彼女が話す。
「生活保護はどうしても私に合わなくて。私はすぐにアパートに入ることができたのだけど、物件自体に問題があるのよね。その物件は登記がされていなくて。そんなところに住むのは怖いじゃない」
日本では建物を建てた場合、1カ月以内に登記をすることが義務付けられているが、登記をされていない「未登記物件」は多く存在する。厳密に言えば違法であるが、罪を問われるようなことではない。それは、登記という行為がそもそも、物件の持ち主を守るためのものであるからだ。社会問題に詳しい弁護士の大城聡氏が話す。
「日本では不動産は価値があるものだから、登記することによって“これは自分の物件です”と言うことができる。仮に第三者に物件を占拠されたときに、登記をしていれば自分のものだと証明ができる。となると、普通に考えれば皆登記をするわけで、分かりやすく言えば、登記もしていない人間が管理しているような物件には何らかの問題があるだろう、という推測は成り立つでしょう」
彼女はあまり多くを語りたがらなかったが、おそらく劣悪な環境の物件に嫌気が差し、路上に舞い戻ったのだろう。幡ヶ谷のバス停で女性ホームレスが撲殺されたように、やはり女性には男性よりも危険がつきまとう。