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――ドリブルができる選手が急にこんなに揃ったのは何か理由があるんでしょうか。久保はバルセロナの下部組織育ち、三笘と伊東は大学卒と、イレギュラーな存在な気もしてしまうのですが……。

レオザ 日本サッカーの基本的なレベルは上がり続けていて、フィジカルや基礎的な技術、コミュニケーションの能力が高い選手は確実に増えています。ただ、三笘や久保のような世界でもトップクラスの選手になるには持って生まれた才能や素質に依存するのでイレギュラーと捉えるのが自然です。歌が上手い子ってボイストレーニングとか受ける前から上手いですよね。それと一緒で、身体能力とか頭の良さみたいなのはどうしても才能レベルで差が出るし、競技人口に左右される「運」です。国の育成システムによりドリブルで抜ける選手がどの世代でも途切れない国など存在しません。

フランスでも「レベチ」な伊東純也 ©GettyImages

――では今の日本代表は、かなり幸運な状況と言える?

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レオザ 現状そう考えるのが自然ですね。三笘はスピードに乗っていれば2人くらいかわすし、伊東純也も突出した身体能力を持っています。コミュニケーションがそこまで得意なタイプではないけど、「あいつは速くて上手くてレベチだからもうそれでOK」ってフランスの所属クラブで言われるくらいですから(笑)。そんな選手は世界でもそうそう出てきません。

「日本人のフィジカルを一番信じてないのは日本人」

――少し前までは、日本人は身体能力で劣るからコンビネーションや技術を磨こう、という雰囲気が支配的でしたよね。

レオザ 過去の経験の刷り込みからか日本人が抱きがちなコンプレックスですね。しかし近年のピッチでの現象を見れば、日本人のフィジカルを一番信じてないのは現象を見ていない側の日本人だと思います。なぜならプレミアやラリーガ、リーグアンで日本人がドリブルで無双してるのを見ているサポーターで「日本人はフィジカル弱いな」と思う人はいませんので。

大型契約を締結し、ビッグクラブからの関心もうわさされる三笘薫 ©GettyImages

――むしろ「日本人って足速いんだな」ってなりますね(笑)。

レオザ ですよね? サイドにおいて前向きでボールを持たせたら三笘は世界トップ10に入るドリブラーで、スピードも強さもプレミアリーグで強みとして活かせています。だからヨーロッパのクラブが日本選手を見る目もここ数年で確実に変わってきている。それに今の代表にはみんな自分の弱点に向き合って改善したり長所の活かし方を模索するメンタリティも兼ね備えてる選手が多いですよね。

――日本人はマジメで役割をこなす、というのも聞く気がします。

レオザ そこは日本人がマジメというよりは、そうじゃないとトップクラスまで成長するのは難しい、というのが正しいと思います。僕もサッカークラブを運営するようになって、自分の能力と向き合えるマジメな選手は本当に少ないんだと痛感しましたし。皆さんの身の回りにもマジメじゃない日本人がたくさんいるのと一緒です。

――間違いないです。ということは、フィジカルや知性に加えてメンタリティまで兼ね備えた選手が揃った今は相当レアな時代だと。

レオザ 今のような充実した戦力状況が永久に続くとは思わない方がいいでしょうね。